第22回 真っ直ぐ坐れば真っ直ぐな心に 〜『永平寺』
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日本を代表する名僧・道元が開いた曹洞宗。その大本山である福井県にある永平寺。
坐禅で有名なこの寺に、百八歳まで天寿をまっとうした男がいました。その男は宮崎奕保(みやざき・えきほ)禅師。
このドキュメンタリーは禅師が百四歳のときに収録された貴重な映像です。
宮崎禅師と言えば、坐禅ひとすじの「実践の人」として、弟子たちに慕われた伝説のお方です。肉類は一切食べず、一生独身を貫いた人としても有名です。
私たちは人生とは何か、おれとは何者かということで、日々悶々と悩んでいます。いろいろな哲学書や宗教書、自己啓発書などが巷には出回っていますが、そんなもの読んでるぐらいなら、とにかく坐っとけ、というのが禅師の爽快なスタンスです。
理論より実践とはよく言われることですが、道元禅師の教え、それを受け継ぐ宮崎禅師の教えは、まず、「型から入れ」というもの。
あれこれ考えて悩んでいるぐらいなら、背筋を真っ直ぐ伸ばして、シャキッと坐ってみる。背中を真っ直ぐに伸ばせば、心も真っ直ぐになる、と宮崎禅師は言います。
「スリッパの位置が乱れているのは、心が乱れているから。心が乱れているからスリッパが乱れる」と言い放ちます。
このビデオを見て自分なりに反省したことがあります。
私もどちらかというと頭でっかちで、まずは何事も理論を学ばないと、何となく落ち着かない。でも、理論を学んでいるうちに、飽きが来たり、頭がこんがらがって来て挫折してしまうタイプです。
たしかに、スリッパの位置ひとつ直せないで、「人生とはなんぞや」なんて考えられませんよね。実は私の先輩でも実例がいます。どん底人生から、いまではとても有名なコンサルタントになった人ですが、彼も、どん底時代、家族の履物をそろえる習慣から、再生していったそうです。
若い人は型にはめられるのが大嫌いですが、型があるからこそ、自由が得られるという逆説的な考え方もあります。永平寺での修行は、坐禅の仕方はもちろん、事細かな生活習慣まで、詳細に決められていて、先輩は後輩にそれを叩き込んでいくと言います。
私たちにはそんな生活はできませんが、背筋を真っ直ぐにのばして、坐ってみるみたいなことなら実現可能そうです。それが無理でも、せめて履物をきれいにそろえて、背筋をシャキーンと伸ばして暮らすことぐらいはできそうです。案外、見えてくるセカイが違ってくるかもですよ。このビデオで禅師の生き様をみて、私は強くそう感じました。