第11回 あなたは時として、自分を「二番手」に追い込んでいないか 〜『人生の特等席』
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「おれなんか、しょせん会社の歯車だ」
「私なんか、けっきょく○○ちゃんの引き立て役だわ」
人生で自分が主役になるということはとても難しいですね。だいたいが、誰かの引き立て役や黒子みたいな役に甘んじています。
でも、あなたがいなくなるとちょっと困る、みたいなことはけっこうあるんですよ。
「あいつがいなくなると飲み会で突っ込んでくれる人がいない」
「彼がいないとおれたちはとてもフツーのグループだ」
「あの子がいなくなると、私が引き立たない」
「あいつがいないとおれはビリだ」
なんて、ね。人生の中で、もっといえば、世界の中で、自分がただいることで、誰かがハッピーになることだってきっとある。渡辺和子シスターの著書『置かれた場所で咲きなさい』は、英語では、"Bloom where Gad has planted you."となります。つまり、自分がいま置かれた境遇で輝きなさいという意味です。
さてさて、本作品に戻ります。大御所クリント・イーストウッドの新作は、おいぼれ野球スカウトの感動ストーリー。ベテラン・スカウトの主人公は、コンピューターによるデータ野球などに反発する古いタイプの人間。おまけに目は衰えてきて、ピッチャーの投球も見極められなくなってきた。
弁護士をしている娘と、主人公が以前にスカウトした若い元大リーガーが何かとおいぼれ主人公を手助けする。
しかし、歳は歳。彼も第一線から退く時期が近づいた。だが、最後のスカウト劇で、彼は土壇場に一花咲かせます。彼は目が見えなくても、バッターが打った音から、ピッチャーの素質を見抜くという、彼でしかできない「技」を持っていたのです。データ野球が主流となった今ですが、彼の、彼だけの「耳」が、彼を人生の特等席に連れて行ってくれたのです。
私たちは、とかく人より目立った特徴がないと、「自分はつまらない人間だ」と自信を失いがちです。でも、どんな小さなことでも、たったひとつ自分にもできることにフォーカスしてみるのは、とても重要なことですね。誰だって、他人に誇れるものはなくても、自分にしかできないことは必ずあるはずです。どんな小さなことでもよいでしょう。そこにスポットライトを当ててみませんか。