連載
二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第13回 悪いカルマの清め方
〜『俺はまだ本気出してないだけ』

『俺はまだ本気出してないだけ』絶賛公開中!

 人生、若くして成功を収める人もいれば、なかなか陽の目を見ない人もいます。

 仏教では、「カルマ」という言葉があります。これはわれわれの人生が、「因果の法則」で出来上がっていることを示す考え方です。
 いままでの人生で、悪い種をあちこちにまいてきた人は、のちのち、その悪い種が発芽して、自分の人生の中に現れて来て苦しむ、というオソロしい法則です。この種は、自分でまいた場合もあれば、もっと前の世代からの関連で発芽する場合もあると言われています。

 人は自分がまいた悪い種は刈り取らなければなりません。そのためのプログラムを、ブッダはちゃんと用意してくれています。それが「八正道」というものです。

「八正道」について語りだすと、何日もかかるので、みなさんでお調べいただきたいのですが、その中のほんのひとつのテクニックとして例をあげるなら、周りの人たちへの「プチ善行」があります。別に、ボランティアや募金などにあくせくしなくてもいいのです。周囲の人々をほっとさせたり、笑わせたりすることだって、「プチ善行」と言えるのです。

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映画『俺はまだ本気出してないだけ』より
『俺はまだ本気出してないだけ』の主人公・シズオも、なんのカルマを背負ったのか、かなりの「遅咲き人生」を過ごしています。漫画家デビューを目指すシズオは、会社も辞め、ファストフードの店舗でバイトをしながら、暮らしています。娘に借金はするは、朝からゲームばかりしているわ、どうしようもない中年なのですが、このドラマの中で、シズオは周囲の人々にささやかな希望を与えていきます。

 シズオがいてくれたことで、独立することを決意した親友、キャバクラのバイトを辞め、自立を目指す青年、そして苦労をともにしながら、シズオのデビューを支える家族。

 人は一人ではひとつになれない、という歌がありましたが、人間というものは、関わっている人々との「ご縁」の中で生きています。誰かが笑えば、ほかの誰かも笑うのです。そうやって、人はみな相互に響き合って生きているのです。悪いカルマを身につけてしまったことは仕方がありません。でも、自分さえ、ちょっと奮起して、人に笑いや安らぎを提供するだけで、運命が断然変わってきます。自分のことばっか、考えていないで、みんなとともに盛り上がって、運命を浄化する方法を編み出しましょう。

『俺はまだ本気出してないだけ』(公開中)
監督・脚本:福田雄一 
出演:堤真一、橋本愛、生瀬勝久ほか
原作:青野春秋『俺はまだ本気出してないだけ』(小学館 IKKICOMIX刊)
http://www.oremada.jp/
©青野春秋・小学館/2013「俺はまだ本気出してないだけ」製作委員会

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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