第1回 プラダは夢見る乙女たちを救えるか!? ・・・『プラダを着た悪魔』
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こんにちは。『29歳からはじめるロックンロール般若心経』の著者・二階堂武尊です。今回から、お香の匂い満載の仏教映画論を始めさせていただきます。
さて、第1回目は、おしゃれガールズを虜にした『プラダを着た悪魔』を取りあげさせていただきます。
まばゆいばかりの召し物が息つく暇もなく次々と繰り出され、男子の私でもうっとりしそうな華やかさ・・・ではあるものの・・・。
結末はおいといて、途中まではこれ、ブッダが観たら、ゲンナリですよぉ。
最初は可憐で野暮ったいフレーバーの漂う主人公・アンディですが、やがて辣腕編集長に認められ、仕事中毒へとまっしぐら。友人や恋人もほったらかし。
「美しい女が美と地位をつかんでいくのがそんなに悪いのかっ!」と乙女たちからお叱りを受けそうですが、仏教的にはズバリNGです。
そんな美や地位は砂の楼閣のような幻で、すぐに終わってしまうからです。
私もとあるファッション雑誌を発行する企業で働いたことがあります。編集長は過酷な職業で、雑誌が売れているときは、業界の数限りない人が群がるし、
雑誌の売れ行きが落ちて、左遷されれば、誰にも相手にされない。年賀状すら来なくなるようなシビアな世界です。
もちろん、その下で働く、若い女性スタッフも過酷な労働を強いられますぜ。
通勤着がダサいとバカにされるのも事実だし、センスのない子はみんなにいじめられるよ〜。それでも、たまに行くプレス発表会やパーティで、業界の有名人などと同席するなどの、つかの間の華やかな世界からどうしても離れられず、編集者という下僕のような労働で、睡眠不足の腫れた顔で、ローンで買った、ヴィトンのバッグを持って、ファッション業界にしがみつく。
ファッション編集者、スタイリスト、ヘアメイク・・・若い彼女たちの多くの中で、成功するのはほんのひとにぎり、後は心身のバランスを崩したり、挫折したりして、田舎に泣く泣く帰っていくパターンもざらでございます。
欲望というヤツはやっかいなもので、満タンに満たされると、一度は落ち着くものの、満たした心に「毒の種」を植え付けます。仏教ではこれを「渇愛(かつあい)」と呼びます。
お酒がうまければ、もっと強い酒を。収入があがれればもっと高い収入を。美しさを手に入れれば、ひときわの美しさを。
といった具合で、のどの渇きにも似た「煩悩」があなたの心を焼き尽くします。
さて、アンディはかしこい女性であり、憧れの仕事を捨てて、一から出直す結末ですが、ここがこの映画の救いですな。みなさんがほっとしたのもこのオチがあるからですね。人は身につけるものが多くなると、それだけ自分が窮屈になります。自著にも繰り返し出てきますが、「人間、手ぶらでバカがいい」ですよ。素顔で素直に正直に、2013年はこんな感じで行きましょうや! ロケンロー。