連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第93回 『呪われた毒々魚 人類滅亡の危機』

『呪われた毒々魚 人類滅亡の危機』※VHS廃番

『呪われた毒々魚 人類滅亡の危機』
1978年・米・92分
監督・脚本/ハリー・カーウィン、ウェイン・デヴィッド・クロフォード
出演/ウェイン・デヴィッド・クロフォード、ジェイソン・エヴァース、バート・フリードほか
原題『BARRACUDA(The Lucifer Project)』

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 もちろん『悪魔の毒々モンスター』(84年)とは無関係の作品。ビデオジャケットの題名に「どくどく」とルビ振ってある。「読めるよ!」と思っていたら、本家『悪魔の毒々モンスター』のポスターにはちゃんとルビが振ってあった! 細かいところまで忠実にパクった意気込みを買いたい。嬉しいことに作品のソフトは、大手から発売されない不遇の作品ばかりを商品化してくれる映像文化社から2017年にDVDが発売されている。


 美しい入り江の町パルムでは、なぜか誰もがイライラしていて、些細なことで喧嘩が絶えない。ある日、スキューバダイビングを楽しんでいるカップルが何かの群れから襲撃を受ける。一瞬横切るシルエットはサメではなく、鋭い歯が並んだ1メートルくらいの魚だ。男の方はそこそこに、カメラは慌てふためく女のビキニがくい込んだ尻を接写で追う(サービスショット)。やがて食いちぎられた手首や足が水中にプカ~。

 ビデオジャケットの表紙と原題でもうお分かりだろうが、襲撃者の正体はバラクーダ。21種いるカマスの中でも大型の3種をバラクーダと呼び、最大種は体長2メートルにもなるグレートバラクーダ(オニカマス)。次にバラクーダ(オオカマス)とブラックフィンバラクーダという1メートルサイズのものがいる。この作品ではサイズからいって後者2種のいずれかであろう。

 バラクーダはダイバーにとってサメより怖い獰猛な肉食魚で、フロリダでカヤックを漕いでいた女性が胸を噛まれて肺が破裂した例もある。また体内に毒を持ち、食べると死ぬこともあるため毒カマスとも呼ばれる恐ろしい魚だ。

 事故があった沿岸は、殺虫剤や化学肥料を製造しているジャック化学の敷地内だった。そこに海洋生物学を専攻する大学生の海洋汚染調査チームが訪れ、リーダーのマイクが海底のパイプから流出する工場廃水を容器に詰める。ちなみに一連の水中撮影シーンは、主役マイクを演じるクロフォード自ら潜って演出している。

 海では2名の釣り人やロブスターの密猟者が次々とバラクーダに襲われ、食いちぎられた魚の死体が大量に浜へ打ち上がる。マイクと保安官は翌朝に工場付近の海域で魚を獲って調べることにする。マイクが保安官の家に泊まると、深夜に箱入り美人娘のライザが夜這い。「親父に見つかったら殺されちまう」とビビるマイクにライザは「ねえ、やらない?」と超積極的。マイクはキスだけにして必死こいてヤセ我慢する(笑)。

 夜明け前から出航するマイクと保安官親子。マイクは例の廃水パイプ付近でバラクーダの襲撃を受けるが何とか2匹を捕獲し、ライザの友人の父親が経営するスノー医院の実験室を使わせてもらう。バラクーダの体内から工場で扱っている化学物質が検出されたと聞かされたスノー院長は、なぜかマイクの意見に否定的だ。

 朝刊の一面に「化学工場が深海の殺し屋を作った」と、ジャックの会社を名指しで記事が出る。この件でジャックに謎の人物(大物らしい)から「どうにかしろ」と電話がかかってくる。その夜、町に宿泊している開発業者の男が新聞社に現れ、記事を取材した記者とカメラマンをサイレンサー銃で射殺する。すべて一発で仕留めるところが手慣れている。ちょうどそこへカメラマンの彼女(スノー院長の娘)がやってきて、男の顔が「パパと会っていた人だ」と思い出す。男は躊躇わずに娘の頭を撃ち抜く。

 その頃、スノー院長に不審を抱いたマイクは院長室に忍び込み、机の引き出しから「ルシファー計画」と書かれた手帳を発見する。その計画は、スノー院長が開発した低血糖になる薬を町人が口にする飲料水に混入し、攻撃的な行動を誘発させるという恐るべき内容だった。だから町人同士の揉め事が増え、製薬するジャックの工場から垂れ流される廃水でバラクーダが過度に凶暴化したのだ。そして計画の黒幕は、スノー院長の研究を軍事利用しようとする国家だった!

 マイクが工場に駆けつけると、すでに保安官と謎の男ら2名との銃撃戦が始まっていた。新聞記者らを殺した男は、政府の雇ったエージェントだった。保安官から拳銃を渡されたマイクが加わるも所詮は素人、プロが相手では圧倒的に不利。そこへ州警察のパトカー軍団がサイレンを鳴らして到着し、降りてきた警官隊がライフルを構える。「助かった」と安堵した保安官が敵にホールドアップを呼びかけると、警官隊は保安官とマイクを射殺する......。


 怖い話だね。『ジョーズ』に便乗した生物パニック映画と思っていたら、後半から国家陰謀モノに転じ70年代のアメリカン・ニューシネマを彷彿させるアンハッピーエンド。カーウィン監督はこの作品の翌年に死去したが、それも陰謀の犠牲者......なワケないか。

 2000年初頭に中古VHSビデオが500円で投げ売りされていた頃、筆者は魚がダイバーの首に食らい付いている表紙の『バラクーダ』という珍しいビデオを見つけた。喜々としてジャケットの裏を見ると「工場廃液により凶暴巨大化した人喰い魚が次々に人をおそう」というキャッチコピーに、なぜか英語のままの解説文。イースタンプロジェクトと聞いたことないメーカーだし(『呪われた毒々魚』のビデオ・ビレッジもマイナーだが)。「前に観たような......」と思いつつ「巨大化」という魅力的なキーワードに惑わされ購入。家でビデオをスタートさせると、中身は『呪われた毒々魚』だったよ!

(文/天野ミチヒロ)

バラクーダ.jpg

『バラクーダ』VHS ※廃番

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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