第3回 『どろどろアンドロイド娘』
- 『どろどろアンドロイド娘』
原題『NIGHTMARE WEEKEND』1985年製作・アメリカ・85分監督/ヘンリー・サラ脚本/ジョージ・ファジェット=ベナード出演/デビー・ラスター、デイル・ミッドキフ、デブラ・ハンターほか
※VHS廃盤
ドロドロ系ホラー(どんなジャンルだ)といえば『悪魔のドロドロ人間』('88年・米)、『ドロドロ・モンスター!! 放射能レポーターの復讐劇』('89年・米)などがある。中でも『ナイトメア・ウィークエンド(週末の悪夢)』という原題が、どこでどうすればこうなるのか、ヨッパライが決めたとしか思えない『どろどろアンドロイド娘』は強烈だ。実際、私の知るT社なんか、社長と社員が「会議」と称して居酒屋でタイトルを決めているしね。
精神病を治療するマシンを開発中のブレイク博士。その助手兼愛人のジュリーは、暴走族時代の元カレ(現セフレ)・ケンと組んで博士の研究を盗もうとする産業スパイだ。で、このマシンがすごい。腕時計でも何でも、コンピューターでスキャンした患者の所持品が「ボン!」とゴルフボールほどの銀色の球に変形。それを患者に飲ませることで精神が安定するというのだから理解不能。また銀球は「キーン」と飛行し、人を襲って殺すこともできる。『ファンタズム』('79年・米)か! ていうかソレ、医療機器なのか?
博士にはジェシカという、女子大生にもなって恋もしたことのない超ウブな一人娘がいた。部屋の中では基本下着姿で、ジョージと呼ぶバーコードハゲのピエロ風ハンドパペットとお話ししている不思議ちゃんだ。実はこのジョージ、誰がどう見てもスタッフが手を入れて動かしているパペットにしか見えないが、一応ロボット。多忙で娘の相手をしてやれないシングルファーザーの博士が、彼女が4歳の時に作ったお友達メカなのだ。そしてジョージは博士のメインコンピューターと連動し、屋敷の番犬も兼任。屋敷に不審者が侵入、またはジェシカが外でチカンに襲われたりすると、「危険! 危険!」と警告し、遠隔操作で敵の持ち物を銀球に変化させ、容赦なく抹殺するのだ。
さて博士と助手は、メイド&プール付きの豪奢な屋敷に若い男女を集め、マシンの人体実験を開始。治験の内容も知らず、飲んで踊ってセックス三昧のノーブラ娘たちは「こんな楽チンなバイトしたら、他の仕事なんてできな~い」。その一部始終を監視カメラで観察する助手のジュリーは、行為が終わったばかりのカップルに照準を定めマシンをオン。すると、男が突然パンティーをくわえながら狂ったようにヘッドバンギング。女も銀球くわえて悶絶。ジュリーはマシンを最大出力まで上げ被験者たちを発狂させ、博士の実験を台無しにして去るつもりなのだ。
そこへ産業スパイのケンに一目惚れし、初体験まですませたジェシカが帰宅。しかし屋内では、マシンの副作用でゾンビ化した男女が徘徊中。パンティーをくわえた男、髪をブラッシングしながら踊る落ち武者ハゲ女。そして口から粘液をドロドロと垂らす女、顔の左半分がドロドロに変形した女......これ? どろどろアンドロイド娘って。ついでにメイドまで「どろどろメイドロイド」になっていて(勝手に命名)、ナイフで2体を刺殺。
ジュリーは、裏切ってジェシカと高飛びしようとするケンを追い車で空港へ。だがジュリーが車を止めた途端、後部座席からスッとどろどろメイドロイドが立ち上がり、ジュリーのノド元をナイフでスパッ! すっかり殺人マシンと化したメイドロイドはケンにも迫る。ここで助太刀のジョージが、遠隔操作でメイドロイドを銀球攻撃。だがケンは、オノの一撃でメイドロイドの顔面を真っ二つ。次の瞬間、銀球が空港のシャッターのストッパーを外し、ケンは勢いよく落下するシャッターに挟まれ首チョンパ。そこへ駈けつけたジェシカ、転がるケンの首に「キャー」と叫んでエンド。
支離滅裂な作品だが、単なるバカ映画とは一線を画す「ある種のバカバカしさ」を感じる。それもそのはず、製作は『悪魔の毒々モンスター』('84年)のトロマ・エンターテインメント。『悪魔の毒々モンスター 東京へ行く』('89年)には関根勤が客演して、当時は話題になったものだ。トロマ社の作風は単なる低予算B級ホラーではなく、独自のエログロセンスに裏付けされた確信犯的なバカ映画なのだ。
最後に朗報を。第1回で紹介した『吸盤男オクトマン』の日本版DVDが、ついに発売(販売元・ランコーポレーション)! リック・ベイカーのプロデビュー作に克目せよ。