佐藤天彦名人が語る NHK杯戦の思い出

撮影:藤田浩司
テキスト『NHK 将棋講座』では、佐藤天彦(さとう・あまひこ)名人が講座「天彦流 中盤の読みとき方」の講師を務めています。第66回NHK杯将棋トーナメントで、準々決勝にまで駒を進めた佐藤名人に、NHK杯戦の思い出を語ってもらいました。

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NHK杯戦は子どものころから見ていました。記憶に残っている対局は、平成6年2月に放送された▲森下卓七段―△森内俊之六段(肩書は当時)戦です。相矢倉の熱戦でした。当時、私は6歳でしたが、なぜか盤面が頭に残っています。

■相性がいい棋戦

プロ棋士になって、NHK杯戦の本戦に出場したいという気持ちは強かったです。やはり注目度が大きいですから。
本戦に出るためには予選で2〜3連勝が必要です。1日で3局勝つのはかなり大変。私は予選に出た6回のうち4回突破していますが、この成績は全体から見ればいいほうではないでしょうか。予選の3連勝のおかげで勝率1位賞を取れたこともありました。年度末に行われるので、そういう巡り合わせもあります。
実は前年の成績優秀者は予選を免除されるのですが、こちらで本戦に出場したことは1回だけ。予選を免除されるような好成績をもっと挙げたかったところでした。今回、講座で自分の実戦譜をたくさん使用したこともあって、NHK杯戦の対局をずいぶん見直しました。予選も含めると、約10年で30局ほど指しています。これはかなり対局数が多いほうだと思います。本戦に出られなかったのは2回だけですし、NHK杯戦とは相性がいいと言ってもいいでしょう。

■本戦で勝ちたい

初めて本戦に出たのは、プロデビューした翌年の2007年。初戦の相手は高橋道雄九段で、高橋先生得意の相矢倉で勝つことができました。2回戦は森内俊之名人(当時)との対局で、今月の講座でも取り上げています。序盤で歩をタダで取られてしまい、その後は粘り続けたのですが、残念な結果に終わりました。
ご存じのとおり、NHK杯戦は持ち時間が短いので、お互いに間違える可能性は高い。悪くなっても逆転するチャンスはあるので、講座で解説したような指し方が有力になります。
先ほど予選の成績がいいほうだと述べましたが、実は本戦の最高はベスト16。まだ大きな結果は残せていません。今後は、いつもどおり一局、一局を大事にして、さらなる上位を目指したいです。
■『NHK将棋講座』2017年2月号より

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