アフリカでは15分に1頭、ゾウが殺されていることをご存じですか?

絵本 『牙なしゾウのレマ』
大きな体なのに、どこかやさしい雰囲気のあるゾウ。人間とゾウの結びつきは古く、4000年前からとも言われています。農耕用の家畜として、また“戦象”としてアフリカや東南アジアなどで飼われてきました。
同時に、ゾウは人間に「象牙」を奪われてきた歴史ももっています。昔から彫刻などの工芸品や装飾品のほか、日本では印鑑の材料として広く知られ、高級品として扱われてきました。ピアノの鍵盤やチェスの駒、ビリヤードの玉や和楽器のバチなどに使用されることがあることをご存じの方は少ないかもしれません。象の牙は、頭蓋骨を割らなければとれないため、象牙を手に入れることはつまり、ゾウの死を意味します。
1989年のワシントン条約によって、象牙の国際取引は禁止されましたが、今なお、密猟によってアフリカゾウは犠牲になっています。2013年に押収された密猟象牙は40トン以上。なんと、アフリカでは15分に1頭の割合で今でもゾウが殺されている実態が存在します。
なぜ、禁止されているにもかかわらず密猟はなくならないのか――。これには、アフリカ諸国の貧困と紛争が大きくかかわっています。牙は、1キロ40万円前後で取引され「ホワイトゴールド」という呼び名もあるほど。大きな収入源になることから、悪いこととは知りながら、ゾウの乱獲があとを絶たないのです。
そんなアフリカゾウが直面する危機を子ども向けにわかりやすく描いたのが、絵本『牙なしゾウのレマ』NPO法人「アフリカゾウの涙」の代表で、獣医師である滝田明日香さんが物語を、自然画家の小林絵里子さんが絵を手がけました。
では、なぜ滝田さんはこの絵本を日本の読者に届けたいと思ったのでしょうか。それは日本人が長い間、象牙製品を消費し、需要を生み出してきたという事実があるからです。そう、このお話は私たち日本人にも関係があることなのです。
舞台は、ケニア共和国のマサイマラ国立保護区。牙がなかったことで生き残ったアフリカゾウのレマが、密猟者に家族を奪われた悲しみにうちひしがれながら、新しい家族を見つけるという物語。家族を得たことをきっかけに、平和な未来を願います。
滝田さんは実際に、ケニアのマサイマラ国立保護区内の管理施設に勤務。ハチを嫌うゾウの習性そ利用して、ゾウの生息地と人間が住む村との間に境界線を作るプロジェクトをスタートさせています。このプロジェクトが成功すれば、畑を荒らしたゾウが害獣視され殺されることも少なくなり、養蜂による現金収入を村の人が得られれば、密猟をストップさせることができます。
1979年に130万頭だった野生のアフリカゾウは、2007年には47万頭までに減少し、その後も年々減少していることが推測されています。このままではあと5年で絶滅するといわれる希少種もいるとのこと。レマとレマの家族、仲間のために、まず、このような現実を多くの人が今、知らなくてはなりません。
10月4日(日)は、「ゾウとサイの日」(Global March for Elephants and Rhinos - Tokyo)。<世界動物の日>のさまざまなイベントの一貫として、世界中で同時に行われるゾウとサイのための行進が、日本では東京・上野公園で行われます。イベントではプロの声優による絵本の読み聞かせや野生動物のことが学べるミニスクールなど、大人も子供も楽しめる内容で構成されています。この絵本やイベントを通じて、こうした野生動物の実態に関心を持つ人が増えるよう、願ってやみません。

※イベントの詳細はこちら:Global March for Elephants, Rhinos & Lions - TOKYO https://www.facebook.com/events/931872243551275/
■『牙なしゾウのレマ』滝田明日香・文、小林絵里子・絵、NPO法人アフリカゾウの涙・協力(NHK出版)

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牙なしゾウのレマ
『牙なしゾウのレマ』
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