ライバルは『20世紀少年』? 不老不死をテーマにした『百年法(上・下)』

百年法 上
『百年法 上』
山田 宗樹
角川書店(角川グループパブリッシング)
1,944円(税込)
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 人間の夢ともいえる「不老不死」。伝説や漫画などでは、不老不死をテーマにしたものが数多く見られます。実際に可能となった場合、私たち人間が幸せになるのか、不幸になるのか、なかなか想像ができないですが、若さを保ったまま人生を楽しめるといった点では、やはり不老不死は幸せなのでしょうか。

 そんな魅惑の「不老不死」をテーマにした小説が、山田宗樹氏の『百年法(上・下)』。舞台は、6発の原子爆弾が投下された日本。都市部は壊滅状態となり、人口も半減。日本全土を支配したアメリカは、天皇制を廃止し、共和制を敷きました。そして、アメリカで実用化されていたヒト不老化技術(human-ageless-virus inoculation:HAVI)を日本に導入するのです。

 そして、HAVI導入時に制定された法令が、生存制限法、通称「百年法」。「HAVIを受ける者は、処置後百年を経て、生存権を始めあらゆる権利を放棄することに同意せねばならない」つまり、百年後には死ななければならないのです。最初の百年がせまった今、政治家や国民は何を思い、どう動くのでしょうか。

 山田氏が「不老不死」を考え出したのは数年前。もし実現してしまったら、その先の社会はどうなるのだろうと想像したのがきっかけだそう。しかし、「不老不死の先」といったテーマは難しく、執筆を断念。しばらくの間は手つかずのままでした。ようやく今作を書き出しましたが、「本当に書けるのか」といった不安が襲い、また、書き出してからも「本当に終われるのか」と常々怖さを感じていたと明かしています。

 山田氏が時間と体力を費やして書き上げた『百年法』に、文芸評論家の大森望氏は「壮大なスケールで描く群像劇。ライバルは『20世紀少年か』」と評価しました。作家の佐藤優氏は、「近未来に仮託して、日本の政治・官僚機構の欠陥を見事に描いた。感動」したと言葉を残しています。

 一度読みだしたらとまらない、「不老不死」をテーマにした同作。一気読みを覚悟して手にとってもらいたい一冊です。

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