『怪物くん』『妖怪人間ベム』『TIGER&BUNNY』―人間ではない者が持つ「人間くささ」

小野寺の弟・小野寺の姉 (リンダブックス)
『小野寺の弟・小野寺の姉 (リンダブックス)』
西田征史
泰文堂
1,296円(税込)
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 ドラマ『怪物くん』や『妖怪人間ベム』、更に昨年大きな反響を呼んだアニメ『TIGER&BUNNY』のシナリオを描く脚本家・西田征史さん。そんな西田さんによる初のオリジナル小説『小野寺の弟・小野寺の姉』が発売されました。

 物語の主人公である小野寺一家は、頑固な姉・より子とちょっと冴えない弟・進との二人暮らし。二人は平凡な姉弟ですが、実は既にアラフォーとアラサーという結構な歳で「結婚」の二文字がちらつく年頃です。そんな二人の家に間違って届いた一通の手紙。それを二人で届けに行くことがきっかけで物語が少しずつ進んでいく、日常や何気ないことで感じる幸せが描かれた一冊です。

 そんなとある姉弟の物語を描いた西田さんに、作品について話をうかがいました。

――今回友人でも恋人でもなく、そこそこ歳のいった二人の姉弟を主人公に選ばれたのはどうしてですか?
「時間の経過と共に見え方が変わってくるものがあると思ったんです。と言うのも、例えば引きこもりやニートの問題で、当の本人が10代や20代ならそこまで問題視はされませんが、これが40代になると一気にニュアンスが変わりますよね。小野寺の姉弟もそうです。姉が40代、弟が30代で結婚しない二人が一緒に住んでいる。これが25と18の姉と弟なら違和感はないと思います。そこが面白いなと思って、わざとこんな人物設定にしたんです」

――今回の作品では、そんな登場人物たちのとても丁寧な人物描写が印象的です。脚本を書くのと小説を書くのとで、どのような感覚の違いを感じられましたか?
「やはり『何で見せるか』が全く異なりました。脚本のト書きではシンプルに書くところを、どのように表現するかを悩み、感情の描写や人物の表現は特に丁寧に書き進めるようにしたんです。それに、映像では人物の心の奥底で思っている感情をあまり口に出させず芝居で見せるところを、小説ではそこをガンガン描けたのが新鮮でした」

――西田さんと言えば『怪物くん』『妖怪人間ベム』『TIGER&BUNNY』と言った、いわゆる普通の人間が主人公ではない作品をこれまで手掛けてこられました。それらの作品からすると、とても日常的で身近な物語のように感じます。
「『怪物くん』などはとても広い世界観や違うフィールドを舞台にした作品でしたので、そこまで風呂敷を広げず身近なところで完結するささやかな物語を書きたい欲求が生まれたんだと思います。本当にただの人間を書きたかった。けれど、実はどの作品でも大事にしている部分は同じことです。怪物や妖怪やヒーローでも、家族や近しい間柄の人を思い合う気持ちや日常の中にあるような何気ない幸せといった『人間くささ』を見せたいし、僕はこれからもそれを描いていこうと思います」

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