『女とつきあったことのない男』の共通点を、角田光代さんが鋭く分析

異性
『異性』
角田 光代,穂村 弘
河出書房新社
1,512円(税込)
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 『対岸の彼女』で直木賞を受賞したほか、数多くの賞を受賞している小説家・角田光代さんと、受賞作『短歌の友人』『楽しい一日』をもつ歌人・穂村弘さん。この両名が、「往復書簡」のようなスタイルで、それぞれ「女の立場」「男の立場」から、24の恋と愛のテーマについて考え、まとめたものが書籍『異性』です。

 共にさえない青春時代を過ごしてきたという2人だからこそ、もてる人ともてない人をわける理由を鋭く分析しています。

 ある回のテーマは、「女とつきあったことのない男」について。これは角田さんが10代の頃に出会った友人・花ちゃん(仮称)の好みのタイプのことで、花ちゃんは、実際に「女とつきあったことのない男」に恋をして、近づいていくのです。

 そんな花ちゃんが好きになる男性を、角田氏が独自に分析したところ、ある共通の条件が見つかりました。以下がそれです。

・おかあさんが買ってきたような服を着ている。
・ジーンズのかたちがへん。
・ジーンズなのに、靴が黒い皮靴。
・髪が黒くて多い。
・眼鏡が銀縁。
・話すとき人の目を見ない。
・自分のせりふに自分で笑う。
・(自分のせりふ以外には)笑わない。
・言葉遣いがへん。
・会話のキャッチボールができない。

 そして、ちょっと失礼では? と思うようなことを冗談とはき違えて、受けを狙って言う。態度が尊大......と、かなり鋭く分析しています。

 そんな男性をなぜ好きになるのでしょうか。花ちゃんが「女とつきあったことのない男」を追いかける理由は、少し男性が引いてしまうものかもしれません。

 花ちゃんの言葉を借りると、「未開の地を開拓していくような気分のよさがある」とのこと。つまり、服やデート時に選ぶレストランといったものから、女性に対する一般的なタブー、女性心理まで、彼のプライドを傷つけない程度にさりげなくアドバイスし、それを彼が学び・実行している姿を見ることが喜びだというのです。

 ちなみにこの条件、穂村さんが実際に挑戦してみたところ、答えながら冷や汗をかいたそうです。服や眼鏡といった着脱可能な部分は「いいえ」が多いのにも関わらず、性格や対人的な振る舞いでは「はい」が目立ったのです。

 「年を取って表面的なことは多少学習したものの、本質的には『女とつきあったことのない男』」タイプなのだろう。髪、黒くて多いし......。」(穂村さん)

 と、条件に自分を照らしあわせて肩を落としていました。角田さんの小説家としての鋭い人間観察力から導かれた条件に、あなたも自身を照らしあわせてみては?

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