J-WAVE「BOOK BAR」×BOOKSTAND
アノヒトの読書遍歴 北澤"momo"寿志さん(前編)
スタイリスト・北澤氏が語る読書スタイル
「本はディテールがしっかりしたものが好き」
多くの俳優やミュージシャンのスタイリングを手掛け、広告やCMのトータルプロデュースも行う北澤"momo"寿志さん。J-WAVE『BOOK BAR』パーソナリティ・杏さんのスタイリストでもある北澤さんですが、杏さんともよく本の話をされる読書好きとのこと。そんな北澤さんの読書スタイルについてお聞きました。
「僕、併読派なんです。一度に3、4冊を一緒に読み進めていく感じ。それもジャンルはけっこう違うものを読みます。それで頭の中が混乱することもあまりないんです。ただかなりハマった一冊と出会ったりすると、そのままガーッと読んでしまうこともあります。そしてページの量を見て『もう後これくらいしか残ってない』ってなると、一度他の本に戻ることもありますね」(北澤さん)
いつも本を読むのは寝る前が多いという北澤さん。仕事の状況などでその時その時の読みたい本は変わるそうです。
「仕事でいろいろと頭を使っている時には、爽快でストーリーがはっきりしているものを手に取ることが多いです。例えば浅田次郎さんの『きんぴかシリーズ』なんかはストーリーが明快で、スカッと読めるところが好きですね」
加えて、作品は特にディテールがしっかりした、情報量の多い本が好きなんだとか。
「例えば村上龍さんの『五分後の世界』なんかは、あの戦闘シーンの書き込みがすごいじゃないですか。緻密な表現まで描写されていて、あれは読んでいて情景がはっきり目の前で見えるような感覚に陥りますね。あまり同じ本を読み返すことはないんですが、これは読み終えた後すぐ二回目に突入しました」
また最近のお気に入りの一冊も具体的な表現の多さでついつい読み込んでいるものがあると北澤さん。
「今読んでいるのは佐々木俊尚さんの『当事者の時代』。面白いですね。最後に佐々木さんが何を言いたいのか探り探り読んでいる感じです。実はこの本はタイトルに引かれて買ってみた本。小説の場合は作家で選ぶことが多いですが、タイトルって大事ですよね。『当事者の時代』のように、それだけでつい読みたくなってしまう作品も結構ある。以前読んだ福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』はこれもタイトルを見て手に取った本で細菌とウイルスについて書かれたものなんだけど、読んでみて『自分はウイルスについて何も知らなかったんだ』と思い知らされました」
次回は北澤さんのお仕事と読書にまつわるエピソードをお送りします。お楽しみに!
《プロフィール》
北澤"momo"寿志(きたざわ・もも・ひさし)
1965年、群馬県生まれ。兼田サカエ氏に師事した後、1990年にスタイリストとして活動を開始。広告、ミュージックビデオ、CDジャケット、雑誌等で様々なアーティストのスタイリングを手掛け、映像を中心としたビジュアル全体のトータルプロデュース、ディレクションも行っている。