J-WAVE「BOOK BAR」×BOOKSTAND
アノヒトの読書遍歴 小倉淳さん(後編)

面白いと聞いた本は何でも読む。
僕は完全に「ミーハー読書」(笑)


 小倉さんはアナウンサーというお仕事をされる中で、実況中継中など、ふとした時に読んでいた本のフレーズが浮かぶ瞬間があると言います。

 「先輩から『良い本を読んで、美味しいフレーズがあったら書き起こしとくんだよ』と言われたりはしていたんですが、僕自身がすごくだらしない人間なんで一回もやったことがないんですよね。ただ箱根駅伝、テニス、アメフトなどのスポーツ中継をしている時、すごく良い言い回しが出ることがあって。その瞬間は『うわぁ、今のフレーズよかった。自分、天才だな!』と思っても、後で『あ、この前読んだあの本の一文じゃないか』と思い返すこともあったりしましたね(笑)」(小倉さん)

 一方で大学教授という顔も持つ小倉さん。最近は大学生に何を読ませたら面白がってくれるかという視点で本と向き合っているとか。

 「学生にとって就職活動に役立つような本となると、僕はやっぱり司馬遼太郎さんだと思うんです。司馬さんの作品には難しい漢字や今では使わない表現、あるいはとても美しい日本語の原点であるような書き方がたくさん含まれています。更に歴史的な人物に触れられているからこそ、そこに自分を投影して読んでいくことができるのではと思っているんです。ただほとんどの学生は3ページくらいでギブアップしてしまうようですね(笑)」

 そんな学生たちに「読書をする」という習慣をつけるための導入として、まず勧めているのが、いわゆるライトノベルといわれる分野の作品。小倉さん自身もライトノベルを読むといいます。

 「表紙そのものも学生が好きそうな漫画チックなものですし、これなら取っ掛かりにはとてもいいと思います。僕自身もライトノベルを読んだりするんです。きっかけは『ビブリオ古書堂の事件手帳』だったかな......『あ、結構読めるし、面白い』と思いましたね。こんな古本屋さんの店主がいたら惚れちゃうかな、なんて考えながら読んでいました。ただライトノベルは、確かにちょっと買いづらかったりするんですけどね。よく書籍関係のお仕事の方と『表紙さえ変えてくれたら、俺たちも買えるんだけどね』なんて話しています。そういう時には司馬遼太郎と、ちょっと厚めの本と一緒にレジに持って行ったり......なんだか学生の頃エロ本買っていた時みたいですね(笑)」

 実は小倉さん、J-WAVE「BOOK BAR」のヘビーリスナー。今後の読書計画も、基本はラジオで紹介された本を片っ端から当たっていく予定だそうです。

 「『BOOK BAR』パーソナリティの大倉眞一郎さんと杏さんが紹介される本はほとんど読んでますし、八割方買っていますよ。いつもお二人のお見立てには感服しています。本当にどの本を読んでもハズれがない。今後も新しい本を自分で開拓して読むことは恐らくないでしょうね。信頼の置けるアドバイザーに本を選んでもらう。これ以上のものはありませんから(笑)」

 普段からラジオやテレビで紹介されている本は基本的に手に取っている小倉さん。

 「紹介されて読んだ後、とても面白かったと感じるものや自分の趣味に合わなかったなと感じるものなど様々ですが、要は、自分の場合は完全な『ミーハー読書』。誰かが紹介したり『面白いよ』と勧めてくれた本ばかりを読んでいます。そういう最近の流行の本に読み疲れると、司馬遼太郎さんにまた戻ってくるわけです」

 本の好き嫌いをせず、様々なジャンルの本を読む小倉さん。アナウンサーや大学教授といった、どんなお仕事もこなされるバイタリティは、小倉さんの読書スタイルそのものなのかもしれませんね。

≪プロフィール≫
小倉淳(おぐら・じゅん)
1958年、神奈川県生まれ。成城大学卒業後日本テレビに入社。「箱根駅伝」や「アメリカ横断ウルトラクイズ」などでアナウンサーを務める。独立後もフリーとして多くの番組に出演。2011年4月より江戸川大学メディアコミュニケーション学部の教授として教壇にも立つ。株式会社VOICE-CUBE取締役。

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