「日本経済」の鍵は、あの人気カジュアル衣料品店が握っている?

円高の正体 (光文社新書)
『円高の正体 (光文社新書)』
安達誠司
光文社
799円(税込)
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 「就職に協定があるほうがおかしい。個人、企業がもっと自由にやるべき」

 これは、『ユニクロ』を展開するファーストリテイリング、柳井正会長兼社長が、会社説明会「ユニクロ希望塾」で発した言葉です。この言葉にあるように、ユニクロは大学一年生でも内々定をもらえる可能性がある、通年採用制度を昨年12月に導入しました。

 就職難の昨今、この制度に希望を感じる若者も多いのではないでしょうか。就職活動に苦労する中、早いうちから動けるというのはありがたいこと。しかし、これで安心してはいけません。あるニュース番組の見出しには、このような文字が躍りました。

 「安心するな日本人」

 実はこれ、ユニクロのグローバル採用のニュースの見出し。日本人の採用は大きく減らさないが、海外展開に対応して新卒8割を外国人採用するというもの。将来的には、国内店舗の5分の1から4分の1は外国人が店長を務める見通しを立てているとのことです。ユニクロ以外にも、ソニー、東芝、楽天など、このグローバル採用に動いている企業が増えています。グローバル社会の本格化で、日本企業が国際化することはけして悪いことではありませんが、この不況下で就職難の時代に、日本企業の外国人の就職率がアップし、日本人の就職率がダウンするのであれば、不安を感じてしまいます。

 そんな私たち日本人の就職率や、日本企業の海外進出と切っても切り離せないのが"日本経済"。しかし、どこまで日本経済のことを理解しているかと問われると、自信がない人も多いのではないでしょうか。例えば、「円高、円安」「ドル高、ドル安」「為替ルート」等々、テレビや新聞で毎日見かける単語ですが、これらを正しく理解している人はそれほど多くないのかもしれません。

 ニュースコメンテーターの「現在の日本の円高は強い経済のあらわれ」という言葉を信じて、誤った理解をしている人も多いと、『円高の正体』の著者・安達誠司氏は指摘します。

 「円高は強い経済のあらわれ」とは、「円高」が起こると、一般消費者には輸入価格が下がるというメリットがあり、それによって消費が促進され、日本経済の上昇にも繋がるため「円高は良いこと」というものです。

 たしかに、この認識は間違いではありません。ただ、安達氏は「個人ではなく、日本の産業全体にとって円高はどうか?」という視点の大切さを主張します。「円高」による消費者のメリットの裏には、輸出産業の打撃があります。それにより、そこで働く従業員の給料が下がり、ひいては日本全体の給料に影響を及ぼし、結果、「円高は日本全体にとって悪いことである」というのが、安達氏の言う「正しい認識」なのです。

 「必ずしも正しいとは言えない考えでも、識者や専門家によって語られれば、その発言の是非は特に検証されることもなく、そのまま無批判に伝えられ、それが"常識"と化してしまうのが日本の現状。経済の専門家やマスコミだからといって、与えられた情報を、精査や検証もなしに信用してはいけない」と安達氏。

 テレビや新聞の情報を信じすぎず、国民一人一人が正しい"日本経済"を理解し、どうするべきかを考えることが、日本が不況から脱出できる近道なのかもしれません。

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