「お金貸して」にどう答える? 100円でもデリケートな「貸し借り」問題
- 『みんなのなやみ〈2〉 (よりみちパン!セ)』
- 重松 清
- 理論社
- 1,296円(税込)
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「お金を工面するためにしてよいと思うもの」
この方法について、メディア・シェイカーズが運営する「M1・F1総研(R)」がインターネット調査したところ、最も多かったのは、「親や家族から借りる」の20.3%。それに対し、「友人から借りる」と答えた人は、わずか8.0%でした。「クレジットカードのキャッシングを利用する」(13.0%)、「銀行ローン・カードローン を利用する」(11.8%)と答えた人よりも少なく、友人に金を借りることへの抵抗感がうかがえます(2011年6~8日、調査対象は1都3県のM1層の男性会社員)。
お金の貸し借りが「デリケートな問題」となるのは、何も大人だけではありません。10代の悩みや疑問に、直木賞作家の重松清さんが、バリエーション豊かな「こんな考え方」をアドバイスする書籍『みんなのなやみ2』には、ある高校2年生の悩みが紹介されています。
「よく"お金を貸して"と言ってくる友だちがいます。べつにカツアゲとか、いじめられているわけではないのですが、金額はジュース代の百円とか、ノートを買うからといって、百円単位で、その子はいいかげんで貸してもちゃんと覚えて返してはくれなくて、いちいち言ったりするのが、まるで自分のほうがケチな人間みたいな気分になって嫌です」
この相談に対し、重松氏は「ひととひととの、基本にかかわること」と捉えています。
重松氏も父から「ひとからもらい煙草をするような男になるな」と教わったそう。自分は煙草を買わずに、いつも人から「ちょっと一本、ごめん」とせがむ人がいます。煙草の一本だから、断る方もケチっぽいので、ついつい許してしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、「おまえは、それだけはするな。ひとがもらい煙草をせがんできたら箱ごと相手にやってしまえ、そのかわり、そいつのことを見下してやれ、情けないやつじゃのうって」と重松氏は言われ続けたのです。
煙草一本だと小さな金額ではありますが。百円や数百円も、積み重なっていけば大金になります。そんな教えから重松氏は、お金を貸す際には、担保と借用書を取る。もしくは、最初からあげるそうです。お金をあげるかどうかは、それまでの人間関係で決まります。「この友だちならば、戻ってこないかもしれないけど、いいか。ダメもとで、百万円、貸すしかないか」と思えるかどうかなのです。
この高校生に対して重松氏は、他にも困っている友だちがいるかもしれないので、みんな一人で断りにくかったら、被害者同盟を作っちゃえばいいとアドバイスしています。
「"お金"は、ただの金額のことじゃなくて、人間関係につながっているものなんだ。軽い感じの借金に応じてやって、ずるずる踏み倒しを許してしまうと、相手はどんどん、なめてかかってくる」(重松氏)
その友だちのことを考えてみても、信頼を失う前に自分のやっていることを自覚しなければなりません。そういう意味を込めてガツンと言ってあげたら良いと重松氏はいいます。