危険な自転車が「社会問題化」中国に勝る日本の自転車保有率
- 『それでも、自転車に乗りますか?(祥伝社新書261)』
- 佐滝 剛弘
- 祥伝社
- 842円(税込)
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ここ10年ほど、交通事故による死者数が大きく減っているなかで、自転車事故による死者数は、それに比例していません。それどころか、ブレーキのない競技用自転車「ピスト」などで公道を走り、摘発されるといったニュースが多方面で聞かれるようになりました。「危険な自転車」は、社会問題化しつつあるのではないでしょうか。
そんななか、書籍『それでも、自転車に乗りますか?』の著者・佐滝剛弘氏は、日本の自転車普及率は驚異的といいます。
『自転車統計要覧第四五版』(自転車産業振興協会)によれば、2005年の日本の自転車保有台数は、8665万台であり、総人口で割ると、ひとり当たり0.7台を少し下回る数字になります。3人家族に2台の自転車があると考えて良いでしょう。
この数字が果たして多いのか、それとも少ないのか。中国をはじめアジアでは自転車人口が多く、日本よりも保有率が高いといった印象がありますが、人口よりも自転車台数が上回っているのは、世界中でオランダのみ。また、日本よりも人口当たりの保有率が高い国は、デンマークなど北欧の国々とドイツしかないのです。
「これらの国では、日本よりもはるかに自転車が普及しやすい地理的・気候的条件が整っている。自転車王国オランダとデンマークを例にとると、オランダは国内最高地点が標高322メートル、デンマークに至っては170メートルあまり。ほぼ平坦な国といってよいし、年間降水量も1000ミリ以下と雨も少ない。山地ばかりで、猛暑や豪雨や豪雪といった気象条件を持つ日本と比べれば、自転車運転の障害はぐっと少ない」(佐滝さん)
また、日本は世界でも有数の自動車産業の集積国です。産業界に占めるウエイトは高く、道路政策も発言力の強い自動車産業界に影響されて、車中心になりがちだと、佐滝さんは指摘します。
こうした悪条件下で、ひとり当たり約0.7台も保有している日本は、世界トップクラスの自転車国といえます。しかし、減らない自転車事故の問題は深刻。具体的な解決策の構築が急務だといえるでしょう。