富士山が噴火する確率は100パーセント。被害額は2.5兆円
- 『もし富士山が噴火したら』
- 鎌田浩毅
- 東洋経済新報社
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2011年に起きたマグニチュード9.0という巨大地震により、日本列島の地殻のバランスが大きく変化しました。『もし富士山が噴火したら』の著者で火山学の専門家・鎌田浩毅さんによれば、地殻のバランスの変化は火山に影響を与え、今後「富士山の噴火」も十分に考えられるといいます。
「もし東京出張中に富士山が噴火したら」という章では、首都圏に最も影響を及ぼす「火山灰」の話から始まります。火山灰は何かの燃えカスではなく、その正体はなんと「ガラスのかけら」。正確には、マグマが地表で冷えて固まり、放出された勢いでバラバラにちぎれたものです。この火山灰がやっかいなのは、富士山から100キロメートル離れた首都圏まで、風にのって飛んでくること。火山灰が入り込むことにより、電気・水道・ガスなどのライフラインや、信号機・踏切などコンピューター制御されているものが、徐々にストップしていくことが予想されるほか、目を傷つけたり、肺機能を低下させたりなど人体に影響を及ぼすことも。
そして、気になる富士山が噴火する確率ですが、富士山は活火山のひとつで、地下にマグマがたまっているのでいつでも「噴火スタンバイ」の状態。よって、100パーセントの確率で噴火するのだそうです。
しかし、富士山を含む火山から、私たちはさまざまな恩恵を受けていることも忘れてはいけません。名水百選にも選ばれている「忍野八海」などの湧水や、温泉、ブドウや高原野菜の栽培、さらには日本の国立公園の起伏に富んだ地形や湖沼など美しい景色の多くも火山の噴火によってつくられたものなのだとか。
ちなみに、火山の寿命は約100万年。富士山は誕生してから10万年しか経っていないので人間でいえば10歳の育ちざかり。江戸時代の「宝永噴火」以降、300年間活動をしなかったということは、10歳の子どもが10日間くらいじっとしていたということになります。次に動くときはさぞかし大暴れしそうですが、国は富士山が宝永噴火と同じ規模で噴火した場合、被害額は2.5兆円にのぼると予想しています。
日本人に慣れ親しんだ美しい富士山。しかし、「恩恵」も「災害」ももたらす活火山であるということを忘れずに楽しみたいものです。