「順番・きまり」を守る日本人はサッカーに向いていない?

どちらとも言えません
『どちらとも言えません』
奥田 英朗
文藝春秋
1,296円(税込)
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 クラブW杯の決勝戦・3位決定戦がきょう横浜国際総合競技場で行われます。欧州代表のバルセロナ(スペイン)と南米代表のサントス(ブラジル)が対戦する決勝戦は、メッシとネイマールがどのようなゴールを決めるか、また、守備陣はどう両エースをおさえるか、トップクラスのチーム同士による激しい駆け引きに注目が集まります。そして、3位決定戦は開催国代表の柏レイソルとアジア代表のアルサッド(カタール)のアジア対決となります。

 準決勝でサントスと戦った柏は、DF酒井のゴールで1点差まで追いつくも、結局は1-3で敗戦。ニュースでは、ネイマールの素晴らしいゴールとともに、1対1の局面で柏を翻弄するサントスのイキイキとしたプレイが何度も流れました。日本人とブラジル人のサッカー能力の差は埋まりそうで、なかなか埋まらないようです。

 直木賞作家の奥田英朗氏は、書籍『どちらとも言えません』のなかで、日本人がサッカーを苦手とする理由について、独自の切り口で紹介しています。1つは「順番を守る」国民性。街中で当たり前のようにタクシーの争奪戦が行われるなど、日本以外の大半の国では順番を守らないシーンがよく見かけられます。奥田氏は、タクシーを横取りしようとした老夫婦に対して、ビジネスマンが首根っこをつかまえて引き剥がすといった光景を見かけたことがあるそうです。

 「待っている奴には回ってこない。これが世界の常識なのだ。ゆえに、我らはボールの取り合いをする競技がとにかく苦手。ラグビーも、バスケットボールも、ホッケーも全部ダメ。もちろん体格の差もあろうが、それ以前に妨害行為にことのほか弱く、メンタル面でも負けちゃっているのである」(奥田氏)

 そういう意味では、ボールを持つ攻守がハッキリしていて、打順とポジションが決まっている野球を日本人が得意としているのは頷けます。野球は敵からの妨害もありません。

 次に、「決まりを守る」という点。よく聞く例え話で、車が1台も来ない交差点で信号を守るのは日本人くらい、といったものがあります。確かに、ガラガラの映画館や新幹線、野球場などで、日本人は購入した座席指定の椅子に律儀に座っています。奥田氏がヨーロッパでスポーツ観戦をした時に見た光景は、彼らは指定などお構いなくまず1番いい席に陣取る、そして指定席の客が現れたら、別のいい席に移る、そこも来たら、また移るということを何度も繰り返すのです。彼らはそういった行為が平気なのです。つまり、ルールは必要なときに適用すればいいのであって、あとはフレキシブルに対応すればいいという考え方なのです。

 「日本人にそういう柔軟性と図々しさはない。他人の席に座るという行為がもう落ち着かなく、悪い位置であろうと自分の席がいいのである。これが農耕民族のサガというものだろうか」(奥田氏)

 自分に与えられたポジションを堅持することが日本人の基本。他人に迷惑はかけてはいけないのです。このようなマインドをもっている日本人は、確かに騙し合いのスポーツ「サッカー」に向いていないのかもしれません。

 とはいえ、ブラジルに勝てなくても、同じアジアの国・カタールには勝利してもらいたいもの。きょう、「順番を守る」「きまりを守る」日本人チームが、クラブワールドカップの3位決定戦に挑みます。

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