「マイナー感」で14歳以下の人気をもつかんだガンダムシリーズ

ネオカル日和
『ネオカル日和』
辻村 深月
毎日新聞社
1,512円(税込)
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 今月25日、香港で開催される「ガンプラビルダーズW杯」。プラモデル「ガンプラ」の作り手ナンバー1を決めるこの世界大会のジュニアコース日本代表(14歳以下)に、北海道に住む小学2年生が選ばれました。中国、韓国、台湾、シンガポール、米国、イタリア、豪州などが参加する第一回大会で、日本を代表して優勝を目指します。

 2009年に建設された実物大ガンダム立像にも多くの子供が訪れたようで、コア層よりも随分若い世代でも、ガンダムは人気の地位をかためているようです。

 「オーダーメイド殺人クラブ」で第145回直木三十五賞候補に選ばれた辻村深月さんが、独断と偏愛で日本のおもしろいものを紹介する書籍『ネオカル日和』。同書のなかで辻村さんは、2000年代のガンダムシリーズに深く携わった株式会社サンライズ常務取締役の宮河恭夫氏に、ガンダムの人気の理由を聞いたところ、このような答えが返ってきました。

 「ガンダムはメジャー感を獲得しなくてもいい。常にマイナーでいいんです。みんなに愛されるものになれば、作品の信念が薄まり、新しさや鋭さを失ってしまう。それよりは、一人ずつに深く愛され、たくさん語ってもらえる存在であり続けたい」(宮河氏)

 また、ガンダムが長く続いてきた理由についてはこう語ります。

 「何がガンダムらしさなのかというルールを守りつつ、その法律の中で自由に遊び、監督や作画を変えて違うものを作る姿勢を恐れなかった。中には昔からのファンには受け入れがたい変化もあったかもしれないが、何が『らしさ』なのかの基準もファンそれぞれの解釈でいい。新しいシリーズのみを入り口に語るファンも歓迎するし、古くからのファンも自分の『ガンダム論』を持ちながら、これからの作品を見守ってほしい」(宮河氏)

 ガンダムは、みんなに愛されるものではなく、男性や女性、30代や10代のファンが、それぞれ「自分のガンダム」を創造し、楽しむものなのです。「作り手によってそれぞれの愛情の形が保護されながら、その愛ゆえに反発や議論の場もでき、ファンからは常に活気が失われることがなかった」と、辻村さんも分析します。

 今後も新たなファンを獲得していくであろうガンダムシリーズ。それと比例して新たな『ガンダム論』も生まれることになります。『ガンダム論』が支えた30年以上ものガンダムの歴史は、若い世代に引き継がれ、まだまだ続くことになりそうです。

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