出世する人は"仕事ができない"ことをさらけだす?

結論はまた来週
『結論はまた来週』
高橋 秀実
角川書店(角川グループパブリッシング)
1,620円(税込)
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 厳しい経済環境のなかで、ようやく勝ち取った就職の内定。しかし、いざ入社してみると、厳しい研修や先輩からの指導に面喰う人も少なくはありません。あんなにきつかった就職活動を終えたのに、まだこんなに苦痛なことがあるのかと、心の声が聞こえてきそうです。「早く出世したい」というのが、最近の本音ではないでしょうか。


 「出世する人の特徴は、まず"仕事ができない"ということだ」


 フリーペーパー「R25」の巻末に、石田衣良氏と交互にエッセイを書いている高橋秀実氏。ここでのエッセイをまとめたのが、書籍『結論はまた来週』です。ここで、高橋氏は、"出世する人、しない人"について、持論を展開しています。

 高橋氏は、25歳でテレビ番組制作会社を辞めると、出版編集プロダクションに転職。半年後につぶれてしまったので、そのままフリーランスとして原稿を書く仕事を25年近く続けています。

 そんな高橋さんのまわりには、仕事ができる有能な人材がたくさんいたようですが、意外にも出世していないよう。むしろ、「大丈夫かな」と心配になった人たちの方が、次々と要職に就いていたりするというのです。

 彼らの立ち振る舞いを考察した高橋氏は、あることに気づきました。彼らは、「仕事ができない」というより、「できない」ことをさらけ出しているようなのです。

 「自分はできないので、人にやってもらうしかなく、それを自覚するゆえか愛想がよく、まわりも思わず手を貸したくなる。実際、こういう人がリーダーになると組織は活性化する。例えば会議でも、まず彼がダメなアイデアを口にする。部下たちは"そんなんじゃダメですよ"と思い、次々とアイデアを出す、というか出しやすくなるのだ。リーダーがダメだから俺が頑張ってあげようと、優越感とともに能力以上の成果をあげたりするのである」(高橋氏)

 リーダーが「できる人」だと、部下は従うしかないといったことが多くみられます。ミスを犯さぬよう委縮したりするので、アイデアもリーダーの考えのミニチュアになったりすることも。常に新しいアイデアが求められる組織においては、何の益もありません。

 リーダーには統率力や決断力が必要などとよく言われますが、本当に大切なのは本人の能力より、人の能力を引き出す「引力」だと、高橋氏は分析しています。

 しかし、このことを鵜呑みにして「できない」を正当化したり、愛想を振りまくことだけに注力していては危険です。「大丈夫かな」と心配されているなかで、要職に就いた人たちはどのような努力をしていたのでしょう。その想像を膨らませることが、まず大切なのかもしれません。

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