「夫婦の寝室は一緒がいい」は本当? 

思想する住宅
『思想する住宅』
林 望
東洋経済新報社
1,620円(税込)
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 夫婦の寝室は一緒がいいか、別がいいか。2年前の調査ですが、30代では8割以上の人が同室。それから先はだんだん別室が増えますが、60代になっても6割強が同室という結果が出ています。日本の住宅事情を考えると、一緒に寝ざるをえないというのが実情かもしれませんが、"夫婦は一緒に寝るべき"で、そうしないと夫婦仲に影響がある、という考え方が存在するのも否定できません。

 『イギリスはおいしい』などのエッセイでおなじみのリンボウ先生こと、林望氏は、7度も家を建築したことがありますが、一度も基本構想を建築家にまかせたことはないそうです。その理由は、「私は『私の住みたい家』をつくるのであって、『建築家の展示したい家』に住みたいのではない」からだといいます。

 そんな氏は最新刊『思想する住宅』で、「日本の住宅というものには、懐疑すべきところが無数にあることがわかってきた」と書いています。

 夫婦の寝室についてはまず、「欧米では寝室をともにしてこその夫婦という考え方が一般的」と述べる一方、日本ではというと、日本の寝具はもともと常に「シングル」で、一部屋しかない長屋住まいでも布団は別々が基本。それぞれが独立した睡眠空間を確保してこそ安眠できるというのが、「日本人のあたりまえの感覚」だったといいます。「だからこそ、性行為のために『一つ布団に枕が二つ』なんていうことが、また喜ばしい営為でもあったわけである」とも。

 さらに、「睡眠行動などというものはすぐれて個人的なもので、ひとりひとりみな違っているのだから、あまり至近距離で寝るのは、まことに以て考えものなのだ」と言います。最後には、「しかとした考えもなく『夫婦寝室』というものを事足りると思っているのは、あまりに単細胞と言うか、不見識というものである」と設計者をばっさり。

 ほかにも「家は断然北向きがいい」「和室など不要」とか、林氏の住宅への一家言は、目から鱗が落ちるものばかり。なんとなく常識だと思っていた"住宅観"が覆る人も多いはずです。

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