第30回 『三大怪人史上最大の決戦』
- 『三大怪人史上最大の決戦』
原題『DRACULA PRISONER OF FRANKENSTEIN』
1972年・イタリア=スペイン・84分
監督/ジェス・フランコ
出演/デニス・プライス、ハワード・ヴァーノン、フェルナンド・ビバロほか
欧米では、『怪物くん』のキャラで有名な西洋モンスター達が「もし戦えば?」といったマニアの妄想を映像化させた作品が多く存在する。最近では『モンスター・トーナメント 世界最強怪物決定戦』(12年)が記憶に新しく、フランケンシュタインの怪物、狼男、ヴァンパイア、ミイラ男、ゾンビなど8体の有名モンスターが、墓地に設置されたリングで王座を争うバカ映画。これは今のところ西洋モンスター決定戦の最終形といった感じだが、最もカルトなのが今回の作品。
まず、ゴジラ映画『三大怪獣地球最大の決戦』(65年)を確実にパクったビデオ邦題と、キャッチコピー「世界3大ホラーキャラクターである、フランケンシュタインの怪物、ドラキュラ、狼男が3つ巴のバトルロイヤル!」にマニアの鑑賞意欲がそそられる。監督はスペインのB級映画の巨匠、ジェス・フランコ! 『美女の皮をはぐ男』(62年)、『悪夢の死霊軍団 バージン・ゾンビ』(71年)、『女体拷問人グレタ』(77年)など、そんなのばかり200本も作って最後は借金まみれで死んだ。では、いつものように誌上ロードショー開始!
ヨーロッパのどこかの小さな村。精神病院を営むスワード博士は、吸血鬼ドラキュラを退治した。それから数年後、すでに人造人間の創造に成功していたフランケンシュタイン博士は、それに飽き足らず世界征服を企てる。博士は手始めにドラキュラを蘇生させるためドラキュラ城へと赴き、勝手に研究資材を運び入れて計画の拠点とする。
博士は人造人間(以後こいつを『怪物くん』に倣って「フランケン」と呼ぶ)に、若い女をさらわせ、その生き血をコウモリの姿で仮死状態のドラキュラに与える。ガラス容器内には本物のコウモリがいて、赤い液体を浴びせ掛けられている。やがて容器内に満ちてきた液体の中で、翼をバタつかせて本当に溺れているコウモリ(汗)。こうして蘇ったドラキュラはフランケンシュタイン博士に加担し、手下の女ヴァンパイア(エロイ)と共に再び村を恐怖に陥れる。
世界征服計画に邪魔なスワード博士は馬車で移動中フランケンに襲われ、博士の女性患者(エロすぎ)は拉致されてヴァンパイアにされてしまう。翌日、林道に倒れていたスワード博士は、占い師のジプシー少女(ちょいエロ)の家に運び込まれる。少女は「満月の夜、第3の怪人・狼男が現れ、我々の強い味方となり勝つでしょう」と予言して外へ出ていくが、ドラキュラとタイマンして(映像なし)瀕死の状態で帰宅し「ドラキュラを倒せるのは狼男だけ......」と言って死ぬ。
その夜、満月に遠吠えが響き渡り、ジプシー少女が呪術で召喚した狼男が出現、ドラキュラ城でフランケンと激突! 狼男は「ウオーでガンス」と身軽な跳躍力でフランケンを攻める。これにフランケンは「フンガー!」と怪力で対抗して狼男を床や壁に叩き付ける。狼男は完全に劣勢。戦況を見守るフランケンシュタイン博士を、なぜか襲う女ヴァンパイア。仲間割れ? 女ヴァンパイアを倒した博士は、「裏切ったな」と言って、棺で寝ているドラキュラの胸に槍をグサッ。その瞬間ドラキュラの目が「カッ」と見開く......と思いきや、傍にいたフランケンが大袈裟なリアクションで「ワッ!」とビックリする(意味不明)。誇り高きドラキュラ伯爵は「ザマス」は言わないとして、出てきてから1度も台詞を発せず死ぬ。でもフランケン、狼男との戦いは終わったの? さらに博士は、人工生命である人類史上の大発明・フランケンも、マシンの電撃であっさり殺してしまう(意味不明)。
ここでスワード博士が、武器を手にした村人達を率いてドラキュラ城に駆けつける。だが、棺の中には既に骨となったドラキュラ。フランケンシュタイン博士も消えている。荘厳にハモンドオルガンが鳴り出し、スワード博士はロザリオをかざし神とジプシーの少女に感謝する。濃霧に包まれていく城。「狼男VSフランケン」の勝敗の行方は省かれ、「ドラキュラVS狼男」のシーンもなく、ウヤムヤのまま「完」。
まあ「史上最低の決戦」だったが、全編に漂う怪しい雰囲気、意外に聞き応えある音楽、そして欧州ハードコア・ポルノに出てきそうなエロイ女達。ユーロトラッシュの快心作として評価したい(いや、それ褒め言葉じゃないって)。ちなみに作品はDVD化されたが、『三大怪人 ドラキュラVS.フランケンシュタインVS.狼男』と、風情のないタイトルに変えられていた......ので買わなかった。アナログビデオ最高!