たった20粒から始まった大和園のクリスマスローズ

「パステリッシュストレイン」。丸い見事なカップ咲きの中に、エンジ色が霧のように入っている。グリーンの色みや花の面影は原種のデュメトルムの特徴を受け継いでいる。撮影:桜野良充
クリスマスローズの愛好会「ヘレボルス倶楽部」代表の野々口 稔(ののくち・みのる)さんが注目するクリスマスローズ育種家が、岐阜県・大和園の佐藤尚史さん。佐藤さんに、クリスマスローズの育種に関わるようになったきっかけなどをお聞きしました。

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■インターネットがつないだ縁

佐藤さんがクリスマスローズ栽培を手がけるようになったのは、ちょうど21世紀に入ったころ。大和園を営む両親からの相談がきっかけでした。生産に携わりつつ経営立て直しに取り組む中で、インターネット上のさまざまなガーデンコミュニティに顔を出していた佐藤さんは、その縁でクリスマスローズの育種家として著名なイギリスのエリザベス・ストラングマンのタネをもらう機会を得ます。
たった20粒でしたが、当時はまだ高価で珍しかったダブルが中心で、病気にも強く無事に15株が育ったそう。佐藤さんはそれを親株に本格的な育種をスタートさせます。
しかし、当時の株は、日本の愛好家の食指が動くような花にはほど遠く、姿形や模様に課題がありました「ダブルは1万円を超えるものも多かったので、手ごろで寒さに強く、シンプルでかわいらしいものをつくろうと思って……」佐藤さんは試行錯誤を続けました。
パステルで描いたようなやわらかな模様をつける「パステリッシュストレイン」や、花の模様が内と外で異なる「フレックルキス」など、佐藤さんの作出で今や大人気となっているシリーズは、偶然にもすべてあの“20粒のタネ”の遺伝子を受け継いでいるそうです。


「こればっかりは遺伝子の気まぐれです」そういって笑う佐藤さん。野々口さんとの出会いも「パステリッシュストレイン」が完成したころだったといいます。
最近はクリスマスローズに興味をもつバラの愛好家がふえてきており、彼らからヒントをもらうことも多いそう。
「今目指しているのは、農薬なしで丈夫に育ちつつ、色や姿が大味ではない花や、自分で育てて切り花として家で飾れる茎の長い花ですね」
■『NHK趣味の園芸』2022年2月号より

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