なぜ? 冬の札幌で南国のランが咲く理由

コチョウラン・ベリーナ(ビオラセア)。上品で爽やかな香りがするラン 撮影:田中雅也
「南国のランが冬の札幌でよく咲いている」――耳を疑うこの話には、ラン栽培のヒントが隠されています。厳寒の北国ならではの日常が物語るラン生活の勘どころとは……。札幌市在住のラン栽培家、川面豊樹(かわつら・とよき)さんにお話を伺いました。

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■真冬でも家の中は20℃前後に

札幌市周辺の一般家庭では、コチョウラン、カトレア、デンドロビウムなどといったランが親しまれています。秋になると天気予報を確認し、9月下旬までにランは家の中に取り込まれ、寒い冬を迎えます。とりわけ年末から2月、最高気温が零度以下という真冬日が続く極寒期、高温が必要なランが札幌でなぜ大丈夫なのか、そこには北国特有の暖房事情と住宅事情があります。
まず暖房設備が充実し、冬季、ある程度の暖かさが確保されることです。家の中はセントラルヒーティングや床暖房などで終日暖められ、室温が20℃前後になります。
「家の中ではTシャツ1枚でアイスクリームを食べている」という笑い話をしばしば耳にするほどです。

■気密性と断熱性が高い住宅

家の中の暖かさを外に逃しては元も子もありません。そこで二重窓にしたり、断熱性の高い壁材が使われたりしています。最近の住宅は気密性と断熱性が高く、また就寝時に暖房をオフにしないので、翌朝まで室温20℃前後が維持されています。
また関東地方のような過度の乾燥もありません。暖かさとある程度の湿度は、ランが咲く要因となっているのです。
日照はどうかというと、北海道の日本海側は雪曇りが続きます。そこで札幌市周辺では、日照が少なくても大丈夫なコチョウランがよく育ちます。一方、太平洋側では雪曇りが少なく十分な日照があることから、カトレアなどもよく育ちます。
札幌市周辺のラン好きの皆さんは、冬季、日中は窓辺近くに置いて光を当て、植え込み材料の水ゴケに1週間に1回程度、水やりをするというくらいで、特別な管理はしていません。家庭によってサーキュレーターや加湿器を利用する程度です。
冬の札幌のラン事情は、温度を確保する大切さを教えてくれています。皆さん、冬に室内でのランを育てる場合、室温を確認するとよいですよ。(談)
■『NHK趣味の園芸』2022年1月号より

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