羽生善治九段、大山康晴十五世名人との一戦を振り返る

撮影:河井邦彦
NHK杯での最多優勝11回、そして、将棋界初の名誉NHK杯の称号を得た羽生善治九段。今回は、羽生名誉NHK杯の心に残るNHK杯戦を3局再掲載し、NHK杯戦にまつわる思い出を語っていただきました。

* * *

――まずは4人の歴代名人を破って初優勝を果たした第38回大会から、3回戦の大山康晴十五世名人との一戦を挙げていただきました。大山十五世名人はタイトル獲得80期、NHK杯戦でも8回の優勝実績を持つ昭和の大名人です。
大山先生には『将棋世界』誌の企画、王将戦の予選と2局教わっての3局目でした。前2局ではどんなに攻めても、軽くいなされてしまうという印象でした。
――観戦記の1ページ目には和服で貫禄たっぷりの大山十五世名人と、鋭い視線を飛ばす羽生さんの写真が載っています。当時18歳の羽生五段にアドバイスするとしたら、何を言ってあげますか?
特にありませんが、あえて言うなら、ひたすらまっすぐに進め、でしょうか。
――将棋は前述の王将戦と同じく大山十五世名人の中飛車。羽生五段は果敢に急戦を仕掛け、見事に大名人を倒します。
まったく歯が立たないのではと思っていたので、勝ち切れたのは望外でした。
――観戦記の結び、大山十五世名人の駒が升目に入らず乱れていたという描写が印象的です。書かれたのは2008年に亡くなった共同通信社の名物記者、田辺忠幸さんですね。
田辺さんには数多く観戦記を書いていただきました。棋王戦の創設に寄与された方です。運動部にいらっしゃったので、相撲をはじめとするスポーツ全般や、趣味のアルゼンチンタンゴの話をよく聞かせてもらったのを覚えています。
――当時のNHK杯戦の司会、聞き手は永井英明氏が務められていました。永井氏は近代将棋誌を創刊された方で、第1回の大山康晴賞を受賞しています。
永井さんは本当はプロに近い棋力がある強豪なのに、初心者であるように聞き手を務めていらっしゃいました。個人的には、はじめてゴルフコースに連れて行ってもらいました。残念ながらゴルフは続かなかったですが……。
――大山十五世名人について印象に残っていることはありますか?
ふだんの大山先生は気さくな方で、とても活動的でした。とあるイベントで隣に座ってサイン会をしたのですが、自分が書く3倍くらいの早さでこなされていて、同じ人間とは思えませんでした。
※続き、大山康晴十五世名人との一戦の観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK将棋講座』2020年8月号より

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