金田一耕助をまるっと大解剖! マニアも驚く圧倒的情報量と魅力あふれるイラスト

金田一耕助語辞典: 名探偵にまつわる言葉をイラストと豆知識で頭をかきかき読み解く
『金田一耕助語辞典: 名探偵にまつわる言葉をイラストと豆知識で頭をかきかき読み解く』
木魚庵,YOUCHAN
誠文堂新光社
1,760円(税込)
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 日本でもっとも有名といっても過言ではない私立探偵・金田一耕助。ボサボサ頭によれよれの袴という冴えない風采ながら、類まれなる推理力で数々の難事件を解決へと導きます。作家・横溝正史さんが生み出したこのキャラクターは、これまでに何度となくドラマ化・映画化され、初作品から70年以上経った今も多くの人を魅了し続けています。

 このたび、往年のファンだけでなく、金田一シリーズ入門者にもおすすめしたい一冊が出版されました。それが『金田一耕助語辞典:名探偵にまつわる言葉をイラストと豆知識で頭をかきかき読み解く』です。

 「辞典」とタイトルにあるとおり、本書は金田一耕助にまつわる言葉を「あ」~「わ」まで50音順に解説しているのが特徴。作品タイトルや登場人物、舞台となった地名などの基本的な情報はもちろんのこと、作品内の名ゼリフや口ぐせ、当時の流行や時事用語、金田一を演じた俳優、影響を受けた著名人や作品などまで網羅されており、その濃密さにはただただ驚かされるばかりです。

 たとえば、日本史の教科書に出てきた記憶のある人も多いであろう「華族制度」。上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵という5階層に分かれていた、という説明だけにとどまらないのが本書ならでは。金田一シリーズに登場する華族の名前と、彼らがどの爵位に当たるかまで図解にしているのです。「『仮面舞踏会』に出てきた飛鳥元忠は公爵だからいちばん爵位が高いのか」「『悪魔が来りて笛を吹く』の椿 英輔は玉虫公丸より位が低かったんだな」なんて知識を得ることができて、作品への理解や興味がより深まること間違いなしです。

 また、辞典以外のコーナーの充実ぶりも見逃せません。巻頭では金田一耕助のキャラクター像や登場人物の相関図のほか、銀座裏にあるという設定の三角ビル「金田一耕助探偵事務所」の図解や各作品の殺害シーンなどもイラストとともに徹底的に紹介されています。

 辞典の途中には、映画のポスターや雑誌連載時の挿画などを紹介するコーナーも。さらに巻末には、ハサミで切り込みを入れて金田一のファッションコーデを楽しめる「パタパタ着せかえ金田一さん」、どこで事件が起きたかが目で見てわかる「事件簿MAP」もあり、最後まで読者を飽きさせません。
 
 著者の木魚庵(モクギョアン)さんはこれが初著書ながら、過去に『金田一耕助The Complete』『横溝正史研究』など金田一関連の記事を執筆したり、横溝作品にまつわるトークライブを開催したりしており、そうとうの金田一マニアであることがうかがえます。

 また、イラストはすべてイラストレーター・YOUCHAN(ユーチャン)さんによるもの。どこかあたたかみとユーモアを感じさせるタッチで、ディープな内容の本書を親しみやすいものにしています。

 もはや辞典の域を軽く超越して、読み物として大満足できるクオリティになっている本書。これをお供に、金田一シリーズを再読してみてはいかがでしょうか? 「ネタバレなし」という配慮がされているので、未読・未見の作品がある人もどうぞご安心を!

(文・鷺ノ宮やよい)

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