悠久の歴史を感じさせるエジプト・アラブ共和国のおもてなし

天井が高く、ゴージャスな玄関。ドアの両脇に置かれたラムセスⅡ世の像とともにガダさんが迎えてくれた。エントランスゲートの外側には、日本で行われたエジプト関連の催しにまつわるオブジェが、いくつか置かれている。撮影:鍵岡龍門
クラシックな空間で、悠久の歴史を感じさせる料理と共にゲストをもてなすエジプト・アラブ共和国大使夫人のガダ・カーメルさん。ファラオの時代から伝わる食材を使った伝統料理をつくっていただきました。

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紀元前から統一国家が存在し、文明が栄えていたエジプト。大使夫人、ガダさんのおもてなしには、この国の長い歴史と重厚な文化を感じさせるエッセンスがちりばめられています。まず印象的なのが、ダイニングルームのしつらい。色鮮やかに彩られたテーブルが、彼女のおもてなしの舞台です。
「今回はラマダンのテーブルセッティングを再現しました。独特なパターンのクロスやランタンは、ラマダンの期間に使われる、特別なものなんですよ」とガダさん。ラマダンは、イスラム暦で9番目の月のこと。エジプト人の多くを占めるイスラム教徒は、この時期、神の恵みに感謝して断食します。日の出から日没まで、食べ物はもちろん水も口にできないので、断食後の食事は大きな楽しみ。家族みんなで、栄養たっぷりの料理を囲みます。ガダさんがイメージしたのは、そんな、温かくて幸せに満ちたテーブルなのです。
そして、もちろん料理が大切なおもてなしの主役。
「今日は、典型的なエジプト料理をつくりました。豆はエジプトでよく使う食材。ファラオ(古代エジプト王)時代にはすでに食べられていたそうです。米なども、古くから食べられていたといわれます」
そら豆のコロッケ「ターメイヤ」をはじめ、数種類の豆に米やパスタなどを混ぜてトマトソースを添えた「コシャリ」、そら豆を煮た「フール」など、伝統の食材を使った料理の数々が、テーブルいっぱいに並びます。
「エジプトでは、お料理をたくさん用意してゲストをもてなします。これは、おおらかで気前がいいエジプト人気質に根ざしたもの。ゲストが満足する顔を見て、自分も喜びを感じるのです」
料理とともに供される「バラティブレッド」は、丸くて平たい形が特徴です。料理をはさみ、サンドウィッチにすることもできます。
「パンも、ファラオ時代からある古い食物。当時、すでにパンを焼く技術があったのです」
スイーツも料理と同様、おもてなしに欠かせません。飲酒を禁止とするイスラム教徒の多いエジプト。スイーツは老若男女
に好まれています。
「自然の甘みがおいしいドライフルーツやナッツは、そのまま食べるだけでなくスイーツの材料にも使います。特にデーツ(ナツメヤシ)は、ラマダン中の栄養補給源としても大切です」
ピラミッドやスフィンクスの時代から、長い時間をかけて磨かれてきたエジプトの食。
「周りの影響を受けつつ、核の部分は守ってきたんですね。食はエジプト文化の重要な要素ということがよくわかりました」と、ジャーナリストの片野順子(かたの・じゅんこ)さんも感心しきりです。
※続きはテキストでお楽しみください。
■『NHK趣味どきっ!大使夫人のおもてなし』より

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