紫綬褒章受章の趙治勲名誉名人 「韓国人のぼくに……感謝しかない」

この5月に紫綬褒章をいただきました。たくさんの方からおめでとうって言われて、へそ曲がりのぼくでも顔がくしゃくしゃになるほどうれしくなります(笑)。
先輩棋士もいろいろな褒章を受けているんですね。尊敬する師匠の木谷實先生、呉清源先生、感慨深いです。ぼくのような人間でも努力すればここまで来られるのかと。あとは大竹英雄先生、林海峰先生。うん? ちょっとどうなんだろうとは思いましたが、まあ、いいでしょう。…このあとがいけない! 石田芳夫様に小林光一様です。もし、受章する前にこの事実を知っていたら、ものすごく、深く悩んだと思います。紫綬褒章を辞退していたかもしれません。世の中には知らないほうがいいこともたくさんあると言われますが、本当なんですね。
受章について正直な感想を言うと、60歳を過ぎたらある程度の人たちに声がかかるのかなって、そんなイメージがありました。最近の日本と韓国、市民レベルでは仲がいいけれど、新聞、テレビから伝わってくるのは両国の険悪な雰囲気ばかり。そういうときに、韓国人のぼくにこういうお話がきたのはもう感謝しかない。ぜひいただきたいと即答しました!
日本から海外に出て頑張っている人、韓国から海外に出て頑張っている人、そんな方たちの力に少しでもなれることがあるかもしれない。異国での生活にはいろんな苦労があるものだけど、決してそのせいにしないで努力して、精進していけば、ぼくみたいに社会に受け入れてもらえる。国籍を超えてこういう褒章をいただけるんだから。微々たるものだけど、そういう人たちの励みとなれればこれ以上の喜びはありません。
ぼくは韓国人として日本に住み、根っこを下ろした。常々、日本が好きだと言っているぼくを韓国の人が受け入れてくれて、韓国の人も日本の人もぼくのことを好きになってくれる、そうなれることが幸せといつも考えています。そういう意味で、本当にうれしい受章でした。
※後半はテキストでお楽しみください。
■『NHK囲碁講座』連載「趙治勲名誉名人のどうでもいい碁の話」2019年9月号より

NHKテキストVIEW

NHKテキスト囲碁講座 2019年 09 月号 [雑誌]
『NHKテキスト囲碁講座 2019年 09 月号 [雑誌]』
NHK出版
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム