タネを売る商売はいつ始まった?

キャベツのタネ 撮影:丸山 滋
野菜のタネはいつ頃から販売されるようになったのでしょうか。種子屋の歴史に詳しい、立教大学経済学部助教の阿部希望(のぞみ)さんに聞きました。

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■江戸時代、種子屋(たねや)は農家が始めました

タネを売る商いが始まったのは江戸時代。江戸では、人口100万都市の台所を支える近郊の農家が、自家採種で余ったタネを売り始めたのが種子屋の始まりです。中山道には小さな店を構えてタネの量り売りをする農家も現れ、往来する旅人が江戸土産に練馬ダイコンや滝野川ゴボウなどのタネを買っていったそうです。
「商品としてのタネ作りが本格化したのは明治以降。それ以前は、野菜の株を雄と雌とに区別して、例えば『根菜類のタネは、まっすぐに伸びる雄の株からとるとよい』というようなものさしでタネを作っていました。やがてそれぞれの野菜の特性を見極め、よいものを選んでタネとりを繰り返して遺伝形質を固めていく選抜育種が始まったのです。こうして生まれたのが『固定種』と呼ばれる品種です。このころには多くの種子屋が専業の個人商店となり、農家に採種を頼んだり、技術指導をしたりして、タネを安定供給するようになりました。固定種のタネは、農家も自分でとることが可能でしたが、品質のよいタネをたくさん欲しい人や、できた野菜をタネとりに回さず、すべて売りたい人などは種子屋から買っていたんですよ」
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2019年8・9月号より

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