趙治勲 名誉名人の新連載スタート!

イラスト:山元かえ
趙治勲(ちょう・ちくん)名誉名人が『NHK 囲碁講座』に帰ってきました。4月号から新連載「趙治勲 名誉名人のどうでもいい碁の話」が始まります。第1回はAIについて。

* * *

ご無沙汰していました。趙治勲です。何年前でしょうか、「ちょっといい碁の話」を連載していたのは。
編集の方に聞きました。連載が終わってから、「残念だあ!」っていう投書がいくつか(たくさん?)あったそうです。連載物の運命は編集長のさじ加減一つ。連載を企画した最初の編集長はぼくのことが好きで、次の編集長はぼくのことが嫌いだった。今の編集長は読者の声に促されてしかたがなくって感じかな(笑)。ぼくとしては、こういうメリハリは大好きです。実際にね、連載を終わりましょうって言われたときはホッとしたもの。そろそろいいかなと思っていたし、碁打ちの話ばかりするのも疲れるし、ネタ切れしそうだったし。そういう雰囲気が原稿から伝わっていたのかもしれないね。
さて、連載復活です。今度は棋士の話だけじゃなく、碁に関すること、碁とは全く関係ない話も取り上げていこうってことになりました。読んだ皆さんに笑ってもらえるとうれしいです。やるからには、毎月『NHK囲碁講座』で真っ先に読まれるページを目指します。名づけて、「どうでもいい碁の話」。どうぞよろしくお願いします。お近づきのしるしに、今回ちょっとしたプレゼントを用意しました。ご希望の方はテキスト5ページの超難問に取り組んで応募してください。
さて、第1回は何の話にしようかな。やっぱりAI(人工知能)だろうね。ここ数年の間に、人類はAIに並ぶ間もなく追い越され、今ではAIを「先生」として奉っています(笑)。世界戦で戦うトッププロにとっては、AIの手法の研究はすでに絶対条件。AI流を知らないのはかなりのハンデとなります。
ある手合日のこと。昼休みに大西竜平(四段・19歳)くんと話をしました。少し前に彼の対局をネットで観戦していて、驚いたのなんの! AIみたいな打ちっぷりで、それはそれは見事だった。「AIの申し子みたいだな」って言ったら、「AIで勉強しているんです」って。ここで気付きました。ぼくの家のパソコンにはAIがまだ導入されていないことに! 「AI、ぼくのところにも何とかしてくれ!」と懇願しました。すると、「大橋(拓文六段・34歳)先生が詳しいですよ」と教えてくれました。インターネットについていろいろ知識が豊富みたい。
ついに我が家にもAIがやってくる! ところが大橋さんにお願いすると、「金子真季(二段・23歳)さんが、むちゃくちゃすごいんです!」って言うんですよ。何がすごいのか分からないけど、「20分ですべて接続できるんです」ってさ。
そしたらぼく、興奮しちゃって。だって真季ちゃんだよ。大橋さんとは比べ物にならないですよ! 男と話すのって面白くないでしょ? もうドキドキしてきて。真季ちゃんとは接点がないから、棋院の職員さんにぼくのメールアドレスを伝えてくれって頼んでおきました。アドレスの入力が苦手というか、できないんです。アルファベットの小さい文字、あれを見ているとイライラしてくるというか(笑)。メールを先に送ってもらえれば返信のところをクリックすればいいだけだから。へへ、返信は得意です。
ほどなく真季ちゃんからメールがきました。得意の返信をすぐに送りました。そして、ここぞとばかりに、気合いを入れて畳みかけました!
「お礼はおいしい食事をごちそうさせてください。なんでもOKです。お酒もしっかりお付き合いしますので、どうかよろしくお願いします」
いわゆる一石二鳥狙いです。ちなみにこれは盤上でも大切な考え方。一手に二つ以上の狙いを持つようにしましょう。一手に一つの狙いでは、狙いのうちに入りません。防がれておしまいですから。
脇道にそれました。その後、どうなったか。返信を送った直後からウキウキしていたのですが、一日たっても返事はなし。二日たっても音沙汰なし…。下心がバレたかと、落ち込んでいました。
そしたら三日目に待望のメールが!
※続きはテキストでお楽しみください。
■『NHK囲碁講座』2019年4月号より

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