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一つの物事の見方の本から物の味方を学んだ------アノヒトの読書遍歴:TAKAHIROさん(後編)

 女性グループ欅坂46 の「サイレントマジョリティー」(2016年)や「不協和音」(2017年)の振り付けを担当し話題を呼んだ、振付師・ダンサーのTAKAHIROさん。実は本好きな一面もあり、小学生の頃は伝記を読んでいたそう。また、最近印象に残った一冊として、芥川龍之介の『河童』を紹介してくれました。そんなTAKAHIROさんに、前回に引き続き、おすすめの本について伺いました。

------前回ご紹介していただいた芥川龍之介の『河童』では、登場人物とダンスをしているTAKAHIROさんを重ねているように見受けられました。
「はい。ダンスもですが、人間として影響を受けたのは、ファッションデザイナーの芦田淳さんです。芦田さんが書いた『人通りの少ない道―私の履歴書』はそういった意味で印象に残った本です。芦田さんとは僕がパフォーマンスをさせていただいたファッション展覧会で出会ったのですが、その芦田さんの考え方や生き方がこの一冊に詰められています」

------どんな内容の本なのでしょうか?
「あとがきを読むとこのように書かれています。『この私の履歴書は、私の家族たち、子孫たち、まだ見ぬ社員たちが読むだろうと思いますが、彼らに残したい言葉はただ一つです。人間は常に自分の信じる道をただ一筋に進むこと。それが人通りの少ない道であろうとも』と。日本を代表して皆に愛されて、たくさんの人に理解されてきた、芦田淳さんのファッション。しかし、芦田さん自身は、例え人が少なくても自分が信じる道を突き進むということを続けてきたんです。たぶんそれに皆が刺激されて、そこに新しい時代ができてきたんだと思います」

------TAKAHIROさんはどんな風に影響を受けたのですか?
「芦田さんは昨年、お亡くなりになられましたが、最後にお会いしたのは自分がパフォーマンスをしたファッションショーでした。芦田さんは、当時体はとてもお疲れの様子で、歩くのもままならない状態。でもご自身で会場に来て、見て、その見たものに対して涙を流していました。自分が作ったものに対して涙を流せるってとっても素敵だと思います。この本からも伝わるように、自分の信念だったり、信じるものに憧れとロマンと子供心を持って生きていける人に僕もなりたいと思いました」

------芦田淳さんの信念に心打たれたわけですね。ほかにも、印象に残っている本があれば教えてください!
「北大路魯山人著『魯山人の料理王国』は僕にとってのバイブルブックです! 魯山人さんは、かの有名な伝説の料理人。料理が好き過ぎて、料理がめちゃめちゃ上手くて、食器も自分で作っちゃって......という人物。寿司もできるし、和食もできるし、いろいろな料理が得意なんですが、基本は『和』の人なんです。この本は、そんな魯山人さんの思いを書きまくった一冊です」

------どんな内容が書かれているんでしょうか?
「料理が分かりすぎちゃって、あれはダメだ、これはダメだ、あれは分かってない、これはどうしてこういう風に言うんだ、もったいない、とかいろいろと文句を言ってるんですが、料理を作る本として見ずに、一つの物事の見方として見る本と考えると、めちゃめちゃ面白いんです。例えば一番初め、物を上手く食べるにはどうすればいいかって聞かれた魯山人さんはこう答えます。『物を上手く食べさせるには、もちろん美味しい食材を出せばいいんだけれども、それは人によって美味しく感じられるかどうかは違うんだ』『人を見て、食材を考えるのが良いでしょう』と。一番簡単なのはこうです。食事を出す時に、例えば『この刺身、瀬戸内の春に捕れた真鯛です』みたいな感じでその産地を言う。とても魅力的な産地です。料理に詳しいうんちくの好きな人は『ああ、これはそこで捕れた魚だから美味しいね』ととてもおいしく感じてくれます。でも、本当に一番大事なのは素材だと。中国料理は、確か素材6割、料理の技術4割などというけれども、日本料理は素材が9割で料理の技術は1割なんだと。でもこの本の前編には、料理のテクニックがたくさん語られていますが(笑)」

------料理の枠を超えた、物事の見方が面白い本。
「ええ。料理について、魯山人さんが怒っているシーンがあるんですが、料理人はニンジンでもジャガイモでもタマネギでも、見つけたらすぐに皮を剥いてしまうと。何でそんなもったいないことをするんだろう。よく食材を見ると、採れた場所、時期、目の前のお客さんによって皮を使った方が美味しい食材だってあるんです。ニンジンが出たからすぐに皮を剥くのが常識だと思ったら、ここから先は何も生まれません。その皮こそに旨味があるときはあるんだぞと。でも出すお客さんも考えなくちゃいけません。皮を付けたままの方が美味しいって自分で分かっていても、何で皮を付けて出してくるのって、美味しく思ってくれない人もいます。だから答えはその都度変わるわけです。僕はダンスの振り付けをするときに人に触れることが多いですが、自分が正しいと思うセオリーをいつもぶつけてもそれは正解にならないってことです。目の前の人を見て、僕のテクニックをたくさん伝えた方が良いか。テクニックとかじゃなくて、その人の"素材"そのものを活かした方が光るのか。そんなことを考えさせられ、教えてくれた一冊です」

------TAKAHIROさん、ありがとうございました!

<プロフィール>
TAKAHIRO たかひろ/1981年生まれ、東京都出身。ダンサー、振付師、演出家。
玉川大学入学後にダンスを始める。卒業後、社会人経験を経て2004年に単身渡米。渡米中の2005年、「アマチュアナイト」のダンス部門1位を獲得。翌2006年、全米放送のコンテスト番組「Showtime At The Apollo」でマイケル・ジャクソンを超える歴代最多の9大会連続優勝し、無敗のまま殿堂入りを果たす。その後、マドンナのワールドツアーの専属ダンサーに抜擢される。帰国後は、2016年に女性グループ欅坂46の「サイレントマジョリティー」。翌2017年には、同「不協和音」の振り付けを担当し話題を呼ぶ。経験や考え方をまとめたエッセイ『ゼロは最強』が発売中。

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