「考えること」の大切さを見直そう

白石勇一(しらいし・ゆういち)七段が、悪手を“病気”に見立てて、“処方箋”(解決策)を伝授してくれる別冊付録「白石勇一の棋譜クリニック〜あなたの悪手、なおします!〜」。前回に引き続き「再発防止! 脱・悪手の総仕上げ(2)」と題し、復習問題と丁寧な解説をお届けします。

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今月を含め残り2回。来月号はなんと最終回です。一年なんて、早いもんですね。皆さんに伝え忘れたことはないか。そんなことを思っています。で、気付いたのが「考える」ことの大切さです。碁を打つのだから考えているに決まっている、そう言われるかもしれません。でも、手拍子で打ってしまい、後悔したことはありませんか? 「この形はこう打つことに決めている」とか、毎局同じ定石ばかり打っていたりはしていませんか? 意外に、考えていない時間帯は多いものなんですよ。
「石を取る」ということを考えてみましょう。本講座でも取り上げましたね。同じ石でも大切な石とカス石があると。取れる石を片っ端から取っていたら、カス石をつかむ確率は急上昇します。石が取れると分かったら何を考えたらいいか。必要なのは、「石を取る意味」なんですよ。
(1)敵の石を取ることによって、こちらの石が絶対に死ななくなる場合。
(2)石を取ることで敵の石の根拠がなくなる、もしくは怪しくなる場合。
(3)石を取ると敵に傷が生じる場合。
このような理由付けが自分の中でできればゴーサイン発動。取っても単純に地が数目増える程度なら、ヨセの最中でもないかぎり手を出さないほうがいい。カス石の可能性が大ですから。
考えても失敗することはあります。でも考えているからこそ、失敗に気付けるんですよね。それだけで効果があると思いませんか?
最終回は、何をお話ししようかなあ。

■復習問題1 経過観察(1 〜27)

三子局。黒2の大ゲイマガカリ、黒4の堅実なヒラキから一転、上辺の白9には黒10と積極的にハサんでいきました。上辺は黒石が多いところ。めりはりがあり好感が持てます。白を裂く黒12、14も大賛成です!

◎出題図(1〜24)
黒1の肩ツキから白陣の膨らみを警戒しました。ところが、白24までの進行を見ると何か違和感を覚えませんか。黒はさっきまで順調だったのに、とても優勢を感じられなくなっています。病名と原因の一着を探してください。

Bad× 1図「地が気になる」病発症
黒1(出題図黒5)、3から右辺にできそうな白地を邪魔しようとしたのが罪の重い構想でした。黒7と構えてもまだ不安定。さらに白8で△(黒)まで薄くなってしまった。以下白14に黒15の守りが省きづらく、白16も許すことに。必要以上に地を気にしたがための悲劇です。

Good○ 正解 右辺は与える!
右辺の白陣だけでなく自陣の構えに目を向けていれば前図の悲劇は回避できました。スケールは明らかに左下から下辺の黒です。そこで浮かぶのが黒1。下辺を盛り上げながら△(黒)に声援を送ります。白2には喜んで黒7までと応じ、黒9(aやbも可)へ。黒優勢です!

■『NHK囲碁講座』2019年2月号より

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