食事は? 病気になったときは? 江戸時代の猫の暮らし

撮影:安彦幸枝
空前の猫ブームといわれる現代ですが、実は平安時代や江戸時代にも猫ブームは起こっていました。首輪とひもでつながれていた平安時代の猫は、上流階級のペットとして宮中で大切に飼われていましたが、江戸時代になると放し飼いにされたために数も増え、一気に庶民の生活の中に入ってきました。歴史作家で武蔵野大学政治経済研究所客員研究員の桐野作人(きりの・さくじん)さんに、江戸時代の猫の暮らしについて教えてもらいました。

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戦国の世が終わり、江戸時代になると、それまでひもでつながれていた猫に、「放し飼い令」が出されました。
当時、江戸の町は何でも食べてしまうネズミの被害に悩まされていたからです。食物だけでなく、障子や襖紙までかじってしまうので油断ができません。そこで救世主である猫の登場です。ネズミをよく捕る優秀な猫は、貸し出されたり、時としてさらわれてしまうこともあったとか。江戸の住まいにとって、いかに猫の役割が大きかったかがわかります。

■食事

ご飯にかつお節や汁をかけた「猫まんま」が一般的。汁はかつお節のだしのきいたみそ汁のほか、アサリやシジミ、魚を煮た汁をかける、あるいは貝や魚の身を細かくしてご飯に混ぜることもあったようです。
器はアワビの貝殻が定番でした。アワビは「御器貝(ごきがい)」とも呼ばれ、人間も使っていた時期がありましたが、いつの間にか猫専用に。江戸の町ではアワビの貝殻が入手しやすく、器としての安定感や程よい大きさが重宝だったのでしょう。

■薬・病院

多くの猫が共存していた江戸には、ペットクリニックも存在していました。「おなかをこわした」「ご飯を食べない」「何となく元気がない」など、大事な飼い猫の調子が悪いときは、猫医者に連れて行き、“猫ぐすり”なるものを処方してもらっていたようです。漢方の一種、烏薬(うやく)が効くことも知られていました。
また、現代人が夏バテ防止にウナギを食べるのと同じように、不調の猫にドジョウやニシンを食べさせる風習も。さらに、飼い主がしっぽと背中の間に灸を据えたりもしました(現代も猫の鍼灸治療あり)。
■『NHK趣味どきっ!不思議な猫世界』より

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