今村俊也九段VS.張栩九段、真逆の棋風が激突

左/今村俊也九段、右/張栩九段  撮影:小松士郎
第66回NHK杯2回戦 第1局は、今村俊也(いまむら・としや)九段(黒)と張栩(ちょう・う)九段(白)の対局となった。佐藤康夫さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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■白昼夢となった大錯覚

棋風は真逆ながらもNHK杯で実績ある二人の顔合わせである。
張栩九段は賞金ランキング上位によるシードで2回戦からの出場となる。名人戦挑戦者に名乗りを上げ、やっと充電期間から脱した。一昨年のNHK杯優勝以来のひのき舞台への登場となった。当然今期も優勝候補の一角である。
今村俊也九段は1回戦で山城宏九段とのベテラン対決を制した。前期ベスト4の上を狙うには、天敵との対戦を突破しなければならない。
解説の石田秀芳二十四世本因坊は「今村さんは世界一厚い碁と言われています。先を急がず、地を欲しがらない、厚み派の代表的存在です。好対照と言うべきか、張さんは地を稼ぎ、積極的に先へ先へと走ります。どちらの言い分が通るかが勝敗の行方を決めることになるでしょう。ちなみに両者の対戦成績は張さん8勝、今村さん2勝です。結構、片寄っていますね」と分析した。

■豪快なボウシ


黒白ともに二連星に構えた。石田秀芳二十四世本因坊(以下本因坊秀芳)は「珍しく感じますね。今どきは星打ちが少なくなり、すぐに三々に入ってくる手法がはやっています」と語った。ちなみに最近の張栩九段は、白番のときは二連星に構えている。昔は星には打たないタイプだった。
右上、白12の三々入りから基本定石が進んだが、黒19のハイが最近の流行である。「黒Aのツギより白10の一子の動きを制限しているという考えですが、一長一短です」と本因坊秀芳。
白22から24と打ち込んで張が注文を付けた。黒25が当然の気合いで、白26から30まで塗りつけたのは予定どおりである。黒31とワタったのも自然な一手。本因坊秀芳は「地が好きな人は相手に地を与えたくないものです。だから張さんは気分があまりよくないでしょうね。白32と整えて、黒にAとダメをツガせることになれば満足です」と分析した。
黒35のボウシは今村俊也九段らしい豪快な一手。1図、白1から3と根元を切ってくれば、黒4、6から黒三子を捨ててサバき、足早に黒14のシマリに回れば打てるという算段だろう。

※終局までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK囲碁講座』2018年10月号より

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