昔は邪道だった穴熊……日進月歩の技術

『NHK将棋講座』の別冊付録「囲い最前線」の講師を務める阿部健治郎(あべ・けんじろう)七段。今月のテーマ「居飛車穴熊」にかけて、日進月歩の将棋の技術と明治維新に思いを馳せました。

* * *

昔は穴熊に組むと強くなれないと言われました。
弱いときに穴熊を指すと伸びしろがなくなると考えられ、指導者は下手が穴熊を指すことを好まなかったようです。時には叱ることもありました。
私はそういう指導は受けていません。
昭和時代は急戦がはやっていたせいもあり、玉が表に出ている囲いがほとんどで、穴熊は邪道と思われていたようです。男らしくないということでしょうか。
平成になると穴熊が大流行。玉が表に出てこなくなりました。そして穴熊の勝率が高くなるにつれて、穴熊こそ本筋で最善という風潮になり、穴熊が邪道という考え方は薄れました。
最近は穴熊に組ませない指し方が増えています。
無理に組んだ場合はすぐに攻め潰して、穴熊玉を引っ張り出します。
そういう盤上の事情もあり、穴熊は邪道という考え方が見直されたわけではないのですが、平成の終わりとともに、昭和に回帰するように穴熊は減るかもしれません。技術は日進月歩です。
2018年のNHK大河ドラマは「西郷(せご)どん」です。明治維新という日本の夜明けは価値観を一新して、新たな文化を創造しました。
近年の将棋界における文明の利器はコンピューター将棋ソフトかもしれません。しかし、人によっては凶器である「銃」をイメージするかもしれません。
将棋ソフトの影響で過去の定跡、局面の評価が180度変わる時代です。人力で切る刀がどこまで通用するか? 2018年の観戦ポイントになるでしょう。 テレビで時代劇や城の特集番組は定期的に放送されている気がします。変わらず人気があるのでしょう。 今年もよろしくお願いいたします。
■『NHK将棋講座』2018年2月号より

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