大地の力をブドウに込めて——ワイナリー訪問記

撮影:田中雅也
千曲(ちくま)川に近い長野県東御(とうみ)市に、個人で立ち上げた小さなワイナリーがある。その名は「リュードヴァン」。急斜面の畑でブドウを栽培し、ワインをつくる小山英明(こやま・ひであき)さんに話を伺った

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「ワインとともに暮らしていきたい」
その思いからワインづくりを始めた小山さんが選んだ場所は、長野県東御市。全国的にみて年間降水量が少ない長野のなかでも、さらに降水量が少なく、日照時間が長いといわれる地域だ。
「長野県産のワイン用のブドウは酸味がはっきりしているのが特徴です。ここなら自分が理想とするワインがつくれるのではないかと思いました。そして、ワイナリーをつくるなら、ワイン用ブドウを育てなければと、苗木を植えることから始めました」
小山さんのブドウ畑は、かつては複数の農家の人々の畑だった。あるじの高齢化で手放され、荒れ果てた土地を小山さん自ら整地。標高740〜830mの急斜面に広がる畑でとれるブドウは、ワインづくりに適しているという。
「うちのブドウ畑は、粘土質の土ですが、急斜面なので水はけは良好。しかも南向きで日当たりは抜群です。粘土質の土というと、根腐れするという悪い印象があるかもしれませんが、この環境のおかげでその心配はありません。粘土質の土は、粒子が細かく味の要素を多く含み、ワインの味を豊かにしてくれます。
また、標高があるため夜はぐっと冷えます。日中との寒暖差が大きく、ブドウは体内に栄養をため込む傾向にあります。若い木でも味に力のあるワインができるのも、この環境と土のおかげかもしれません」
豊かな土地に植えられているのは、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールなどの欧州系のワイン用ブドウ。大地の力を感じさせるワインは、本場の味に親しんでいる人もうならせるほどだ。

■ワインには、人も地域も元気にする力があると思う。

ワインとともに、土地に根ざした豊かな食文化を伝えていきたいという小山さん。ワイナリー名の「リュードヴァン」はフランス語で「ワイン通り」を意味する。ブドウ畑からの一本道は、今、近隣農家や地域のレストランなどとつながり始めている。
「おいしいワインをつくる小さなワイナリーがふえていけば、ワインを扱うレストラン、ホテル、ショップなどができ、それに付随して良質な野菜や肉、チーズなどの食材を提供する農家とのつながりができるでしょう。よいものをつくって、生活していければ地域は活性化するのではないでしょうか。
今の子どもたちが大人になったときに『こんなおいしいワインが地元にあるんだ!』と誇りに思ってもらえるワインをつくり続けていきたいです。そして、その子どもたちが地域の未来を担ってくれればうれしいですね」
■『NHK趣味の園芸』2017年11月号より

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