秋山次郎九段VS.洪清泉三段 「全く見たことのない進行」の序盤

左/秋山次郎(あきやま・じろう)九段、右/洪清泉(ほん・せいせん)三段 撮影:小松士郎
第65回NHK杯1回戦 第18局は、秋山次郎(あきやま・じろう)九段と洪清泉(ほん・せいせん)三段の対局となった。高見亮子さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。
(本文中の肩書・段位は放送時のものです)

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■見事に戦いが続き

秋山次郎九段と本局解説の加藤充志九段は、菊池康郎氏が主宰する「緑星囲碁学園」で研さんを積んだ。通称「緑星」は、山下敬吾九段をはじめ、多くのトップ棋士を育て上げた名門だ。
時代は移り、現在「名門」を継いでいるのは洪清泉三段が立ち上げた「洪道場」だろう。師匠を問わず誰もが学べる点で形態は異なるが、出身者には平田智也七段、一力遼七段、芝野虎丸七段、藤沢里菜女流本因坊など多くの若手強豪棋士がいる。洪は指導者として実績を残しつつ、2009年には自身も棋士になり活躍している。
さて、対局前の控え室では、温厚な秋山が静のイメージなら、何事にも興味津々の洪は動。対照的ながら、棋風は共通している。
「お二人とも攻めを得意とし、狙いを持った碁。どちらのパンチが入るかが見どころです」。両者は初対局だが、加藤九段は戦いの碁になることを全く疑うことなく予想した。

■見たことがない

加藤充志九段の予想どおり、瞬く間に戦いが始まった。

まず、洪清泉三段の白10のサガリが珍しい。定石どおり白11のツギなら黒は手を抜けるが、実戦は白Aで隅の黒が危うい。黒17と守らせて白Bが洪の想定図だったようだ。だが、秋山次郎九段は黒11と反発した。「ここに切られた経験がなくて」(洪)、「僕も切った経験がない」(秋山)とは局後の両者の笑顔の会話だ。戦端が開かれ、黒17まで「全く見たことのない進行」(加藤九段)となった。
「黒19がどうでしたか?」と洪が疑問を投げかけ、秋山も、「この押しではなく、黒21、白22を交換したあとに黒Cとトブほうがよかったですね」と応じる一コマもあった。実戦は黒27までと中央を補強し、右辺の白を治まらせ、黒29と下辺の攻めに向かったのだが、このあとの戦いは白がペースを握ることになったためだ。
右下隅は、1図の白1には黒10まで、aの弱点があり、白がオイオトシで取られる。白はのちにDを狙うところだと加藤九段は言う。

白30から32のツケが、洪の放った強手だった。2図の黒1は白6まで、aとbが見合いでハマリとなる。黒1でcも白の注文だ。

■『NHK囲碁講座』2017年10月号より

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