自分の手で未来は変えられる! 脳性麻痺の息子と家族の23年間を綴ったノンフィクション
- 『ピンヒールで車椅子を押す』
- 畠山 織恵
- すばる舎
- 1,540円(税込)
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「子どもがいるから」「家族に反対されているから」「私には障害があるから」――皆さんの中には、さまざまな理由で自分の夢ややりたいことを諦めている人がいるかもしれません。そんな人にぜひとも紹介したい書籍が、脳性麻痺の息子を持つ畠山織恵さんが著した『ピンヒールで車椅子を押す』です。
畠山さんが第一子となる「亮夏(りょうか)」くんを出産したのは19歳のとき。一般的な赤ちゃんよりも発達が遅くて不安に感じていた畠山さんは、亮夏くんが生後9か月のとき、病院で脳性麻痺という診断を受けました。障害者の子どもを育てることは畠山さんにとって未知の世界であり、正直に言えばポジティブなイメージはなかったといいます。そこで畠山さんが抱いたのが、次のような思いです。
「だからこそ彼には障害を言い訳にしたりなんかしないで、かっこよく生きてほしいなあ。自分のこと好きだよって心から素直に言える人間になってほしいなあって、漠然とだけどそう思った」
「だがしかし! かくいう私が自分のことが好きじゃないのだ。誰よりも自分を信じていないし、誰よりも自分が嫌いなのだ。そんな私がいったいどうしたら自分の子に自信を持たせることなんてできるのだろう」(同書より)
同書には、そこから始まった家族の23年間にわたる成長記録が畠山さんの言葉で綴られています。
私たちに叶えたい夢や希望があるとき、そこに障害や困難はつきものです。その原因にあるのは、文字どおり身体的・精神的な障害かもしれないし、自分のことを信用できない勇気のなさかもしれないし、お金や距離といった物理的な問題かもしれません。人によってさまざまでしょう。けれど畠山さんと亮夏さんの信条は「やってみたいことがあるなら、どうしたらできるのかを考えて、できることを行動する」こと。脳性麻痺を抱えながらも成長するにしたがって、乗馬、パラグライダー、キャンプ場での寝泊まり体験、一人旅......と自分のやりたいことを叶えていく亮夏さんの姿には、自分も一歩踏み出してみようと背中を押される人も多いのではないでしょうか。
そしてそれは、母であっても、障害のある子どもを育てていても、大好きなピンヒールのパンプスを履いておしゃれを楽しむ畠山さんの姿にも通じること。
「世界の色も、人の目も、決めていたのは自分の心だった。(略)世界の色は、自分で決めることができるんだ」
「どんな人生を生きるのか、それを決めるのも選ぶのも親でもなければ、社会でもない。自分自身だ。自分が思うように生きたらいい」(同書より)
この言葉には、困難があっても「どうか自分をあきらめないで」という彼女の強いメッセージが込められています。畠山さんは現在、介助員向け実践型研修などをおこなう一般社団法人HI FIVE代表、そしてファッションカウンセラーとして、多くの人に生きる力を届けています。第1回「日本ビジネス賞 新人賞」プロデューサー特別賞にも輝いた同書は、ビジネス書の枠を超えて多くの人に希望を与える一冊になることでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]