過去に起きた企業の炎上事件を徹底分析! 炎上しないための予防策を伝授

炎上回避マニュアル
『炎上回避マニュアル』
新田龍
徳間書店
1,815円(税込)
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 「炎上」とは、インターネット上に投稿された情報に対して、批判やネガティブな意見が殺到し、爆発的に拡散していく状態を指します。発信者が企業であった場合、謝罪に追い込まれるばかりか、長きにわたって不名誉な評判と記憶を残したり、莫大な損失をこうむったりすることも少なくありません。

 では、これまで炎上した企業や人は、何が原因だったのでしょうか。炎上しないためにはどのような予防策や"火消し方法"があるのでしょうか。人事コンサルタントでブラック企業アナリストを名乗る新田 龍氏が、これらを徹底分析した一冊が『炎上回避マニュアル』です。

 新田氏は「内容や文言に留意すべきデリケートなテーマは『さしすせそ※』で表すことができる」(同書より)と言います。
(※)一般社団法人SNSエキスパート協会 参照

さ:災害・差別
し:思想・宗教・社会保障
す:スパム・ステマ・スキャンダル
せ:政治・セクシャル(※LGBT、ジェンダー含む)
そ:操作ミス・粗相(※誤投稿、誤爆含む)

 同書では、この「さしすせそ」に沿って過去の炎上事件を取り上げ、「炎上事件の概要」「何が問題だったのか」「対応と結果」「どうすれば炎上せずに済んだのか」について詳しく解説、検証しています。

 たとえば「す」の「ステマ」の事例として挙げられているのが、「100日後に死ぬワニ」ステマ騒動です。この作品は「漫画家があくまで個人的に自身のSNSに投稿している」というスタンスで公開されていたにもかかわらず、連載最終日となる100日目以降、突如矢継ぎ早に商業展開の告知がなされました。コラボムービーのクレジット内に大手広告代理店「電通」のスタッフの名前があったことから、「作品自体に最初から電通が関わっていた案件」との噂が流布し、炎上したというのがあらましです。

 これは、実際に電通案件だったのかどうかよりも、「人々の純粋な関心を強引にお金に換えるようなマーケティング手法が嫌忌され、それが物語を最初から応援し、一緒に盛り上げてきたファンの気持ちを失望させてしまった、という構図が大きかったのではないだろうか」(同書より)と新田氏は分析します。

 同書では他にも「吉野家『生娘をシャブ漬け戦略』事件」、「『就職の教科書』&フジテレビ『底辺の職業ランキング』炎上事件」、「グルーポン『スカスカおせち』炎上騒動」などの事例をピックアップし、解説しています。

 稀ではあるものの、着実な対処や迅速な対応で早期に炎上を鎮静化させた例もあります。ペヤングソースやきそばで知られるまるか食品の異物混入事件への対応や、株式会社ホビージャパンがプラモ転売容認発言をした編集者に対して下した処分などは、炎上が無事沈下したケースとして紹介されています。万が一炎上したとしても、理想的な対応ができれば、逆に信頼度獲得に繋がることもあるのです。

 とはいえ、もちろんどのような発言であれ、炎上しないに越したことはありません。いつ、どこで、誰が見て、記録しているかわからない今の時代。新田氏の言うとおり「誠実かつ真摯に日々の営みを継続し、公明正大なビジネスをおこなっていくべき」(同書より)であるとともに、今後ますますこうしたネットリテラシーを身につけることは必須となっていきそうです。

[文・鷺ノ宮やよい]

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