人気の「ゾンビコンテンツ」をあらゆる角度から徹底解剖!
- 『大学で学ぶゾンビ学~人はなぜゾンビに惹かれるのか~ (扶桑社新書)』
- 岡本 健
- 扶桑社
- 1,034円(税込)
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ホラー作品の中でも常に高い人気を誇る「ゾンビ作品」。映画、ドラマ、ゲームなど、なぜ私たちはこれほどまでにゾンビに魅了されるのでしょうか?
そんなゾンビの文化や歴史、社会的・文化的背景などを分析し、わかりやすく教えてくれるのが『大学で学ぶゾンビ学~人はなぜゾンビに惹かれるのか~』です。近畿大学総合社会学部准教授の岡本 健さんがおこなっているゾンビにまつわる講義が、この1冊にまとめられています。
本書は全5章からなり、第一章「『ゾンビ』とは何か」では、研究対象のゾンビについて解説。ゾンビはブードゥー教の呪術にルーツを持ち、一言に「ゾンビ」といっても「現実のゾンビ」「虚構のゾンビ」「概念のゾンビ」などの違いがあるようです。本書ではさまざまなメディアに登場する「虚構のゾンビ」について研究していくことを明らかにしています。
第二章では、おそらくみなさんにとって一番馴染みのある「映画で見るゾンビの歴史」を解説。ここでは、『ホワイト・ゾンビ(恐怖城)』(1932年)、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)、『ゾンビ』(1978年)、『死霊のはらわた』(1981年)、『バイオハザード』(2002年)、『REC/レック』(2007年)など、数多くの作品を時系列的に紹介しており、ゾンビ作品がどのような歴史を経てきたのかがよくわかります。この章だけでもずいぶんとゾンビ映画に詳しくなれそう!
さて、時代とともに移動社会や情報社会の波はゾンビ文化にも訪れるもの。第三章「ゾンビのグローバル化、マルチメディア化」では、人や情報の移動が盛んになるにつれ、ゾンビがどのように空間を移動するようになったかを映画『ワールド・ウォーZ』(2013年)などを例に挙げて解説。また、国際化や多様化が感じられるゾンビ映画や、ゲームメディアにおけるゾンビについても取り上げています。
第四章「日本のゾンビ文化考」では、視点をぐっと日本へ寄せます。日本ではゾンビコンテンツがどのように展開されてきたのか、『アイアムアヒーロー』(2016年)や『カメラを止めるな!』(2018年)、『屍人荘の殺人』(2019年)といった作品を紹介しながら説明しています。
また、「カワイイ」の代表的存在である「ハローキティ」をゾンビ化させたフィギュアや、「萌え」とゾンビをかけ合わせた美少女ゾンビコンテンツ『さんかれあ』『りびんぐでっど!』などが生まれているのも、日本ならではの流れといえるかもしれません。町おこし的なイベントにゾンビが使われることまであり、日本独自のゾンビカルチャーが築かれていることがわかって興味深い!
最終章となる第五章は「なぜ人々はゾンビに惹かれるのか」。著者はゾンビが他のモンスターと大きく違う点として、「『他者』でありながら元は我々と同じ人間である」(本書より)を挙げ、「ソンビはまさに、鏡のような気になる存在として、我々の前に現れる。だからこそ、私たちはゾンビを気味悪がると同時に、惹かれるのである」(本書より)と結んでいます。
ゾンビについてありとあらゆる角度から研究され、解説されている本書。ゾンビ好きな人にとっては、これまでの知識を体系立てて整理するのにピッタリな1冊となりそうです。
暑さの厳しい今の時期、本書を手元に置いてゾンビ映画を鑑賞するなんてひとときもオツなものではないでしょうか。