名画を見る際はどこに注目すればよい? 構図や線、色などから徹底解説!
- 『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』
- 秋田麻早子
- 朝日出版社
- 2,035円(税込)
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「絵は自分の好きなように自由に見ていい」。これはよく言われる言葉ではありますが、「なぜこの絵に惹きつけられるのだろう?」「この絵の良さはどこにあるのだろう?」といった疑問を、感覚だけでなくロジックでも説明できれば、名画をより深く楽しむことができると思いませんか?
そんな"ビジュアル・リテラシー"ともいえる「名画の構造の読み解き方」を教えてくれるのが、本書『絵を見る技術』です。
「絵の見方を知っている」とは「線・形・色などの造形の見るべきポイントを押さえ、その配置や構造を見ていること」だというのは、美術史研究家で本書の著者でもある秋田麻早子さん。では、そもそも絵を見る技術を習っていない素人と、美術教育を受けた人では何が決定的に違うのでしょうか。
著者いわく、それは「目の動かし方」なのだそう。絵の見方を知っている人は、画面を上下左右、端までまんべんなく目を動かし、背景との「関係性」まで意識して見ているのだとか。本書にはそうしたスキルを習得するための秘訣がたくさん出てきます。
たとえば、絵の主役ともいえる「フォーカルポイント」(焦点)の見つけ方。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』という有名な絵がありますが、これはフォーカルポイントを明確に提示している代表格なのだそう。主役となるのはもちろん、中央に座り広い面積を占めているキリスト。後ろが窓になっていて、明暗のコントラストも他より高くなっています。さらに、背景の線がフォーカルポイントに集中している、画面内の他の人物たちが腕や手、視線をキリストに向けていたりすることなどが、さらに拍車をかけています。
このフォーカルポイントの見つけ方を知っていると、まずは絵のどこを見たらいいのかわかるようになり便利ですね。
そして、視線や色、バランスなどに加えてもう一つ重要になってくるのが「構図」です。絵における特定の配置は、慣用句のように決まった意味を持つこともあるため、基本をおさえておくと構図が絵の意味を教えてくれるようになるのだそう。たとえば、配置においてのガイドラインともいえる「マスター・パターン」がわかると、一見何気なく見える絵の中にもすーっと秩序が浮かび上がってくるようになります。
どのように見つけるかというと、まずは絵に十字線と対角線を引いてみる。レオナルド・ダ・ヴィンチの名画『モナ・リザ』を例にとると、左眼が中心線に乗っていて肩が真ん中あたりに来ます。そして、二本の対角線が作り出す三角形の上部に顔、下部に手が収まっていて安定感を感じます。バストアップの肖像画ではこのように目が中心線か対角線の上に置いてあることが多いそうで、「画面の十字線と対角線を、名画は無視できない存在として扱っている」という一つの秩序がわかるというわけです。
これらは本書に登場する「絵を見る技術」のごく一部。ほかにもさまざまな「名画を読み解くカギ」が紹介され、読むだけで絵に対するひととおりの観察眼を養うことができます。あとはより詳しく知りたい部分を自身で調べたり、実際に名画の数々を見て経験を増やしたりすることで、「自分だけの絵の見方」がさらに身についていくことでしょう。本書は、皆さんが名画を見る際のコンパスとなる一冊といえるかもしれません。