電気グルーヴの石野卓球氏は、「歌った時の喉触り」を重視している

『アイデア特別編集 電気グルーヴ、石野卓球とその周辺。』(誠文堂新光社)2,100円(税込)
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 2月27日にニューアルバム「人間と動物」をリリースした電気グルーヴ。前作「20」から約3年半ぶりとなる今作は、全曲歌もので統一されたテクノポップアルバムで、コンポーザー・石野卓球氏のメロディアスな側面が垣間見られる作品。彼らはこのアルバムを引っ提げて2月27日からワンマンツアー「ツアーパンダ2013」を敢行。ワンマンライブは5年ぶりということもあり、往年のファンを中心にTwitter等でも話題になりました。

 1989年の結成以来、日本のテクノ、エレクトロニカをはじめとする電子音楽分野の第一線で活躍し、アルバムジャケットやTシャツなどのデザイン性の高さでも人気を博す彼ら。書籍『アイデア特別編集 電気グルーヴ、石野卓球とその周辺。』のなかで、石野氏は新作「人間と動物」の制作秘話を次のように語っています。

 「まずやろうと思ったのは、仮歌で適当に歌ったものの語感を変えずに、日本語の歌詞に翻訳していこうというのが重要なテーマだったの。もしそれをたとえば英語のままのにしてしまうとひと工程放棄したことになると思ったから、それはしたくなかった」

 ピエール滝氏曰く、あえて歌詞に日本語をうまく当てなければ仮歌の雰囲気は残り、一見ハマりも良いように聴こえますが、電気グルーヴ的にはもう一歩踏み込んで"日本語で上手く言う"方向で制作を勧めたのだとか。

 たしかに、電気グルーヴといえば一風変わった歌詞が特徴的。何よりも音の語感にこだわることによって、独特の言葉づかいとサウンドとのマッチ感が生まれるようです。また石野氏は語感を優先させるだけでは深みが足りなくなるとも。

 「いくら言葉の持っている語感を優先させるといっても、日本語の歌詞で、ある程度意味が通って、さらに聴いた時の耳触りがよくて発音したときの舌触り、歌った時の喉触りっていうの?(笑)が、うまい具合にできていれば、より深みが増すと思うんだよね」

 語感を大切にしつつ歌詞の意味も伝わるようにすることによって、リスナーに"言葉の連なりの向こう側にある意味を考える余地"が生まれるのだとか。電気グルーヴが長い間ポップカルチャーのトップを走り続けているのは、こうした強いこだわりが理由なのかもしれません。

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