ついにひも解かれる「村上春樹ワールド」、評論家・福田和也が迫る

村上春樹12の長編小説 1979年に開かれた「僕」の戦線
『村上春樹12の長編小説 1979年に開かれた「僕」の戦線』
福田 和也
廣済堂出版
1,620円(税込)
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 プラモデル「ミニ四駆」が、今年30周年を迎えるということで話題になっています。親子2世代をターゲットに、13年ぶりの全国大会開催や販売終了の旧車種を復活させるなど「ミニ四駆」の面白さをアピールしていきます。

 30年の月日は長いものです。その「ミニ四駆」と並ぶ32年間の月日を、「小説」という分野の第一線で活躍してきた作家がいます。その作家とは、『村上春樹』。ジャズ喫茶兼バーを営みながら33年前に小説を書こうと決意し、同年に「風の歌を聴け」で第22回群像新人文学賞を受賞しデビューしました。村上氏の作品は、独特な言い回し、アメリカ文学の影響を受けた文体で圧倒的な人気を保持し続けています。

 「行きがかりがどうであれ、作家―当時はバーの経営者だった―は、誕生し、今や私たちは、その存在を当然のものとして受け入れるだけはでなく、彼がいない世界を想定できない、という認識の下で生きているのだ。」

 これは、『村上春樹』の世界をひも解く、書籍『村上春樹12の長編小説』での著者福田和也氏の言葉です。本書には、村上氏の12作品の中から引き抜いた文章と、福田氏の評論で構成されています。好きと厳しさが入り混じる福田氏の文章ですが、そんな福田氏が「これまで作家が描いたもののなかで、もっとも美しく説得の輝きを帯びている」(作家=村上春樹氏)と絶賛する小説『スプートニクの恋人』の一節があります。

 「ひとりぼっちでいるというのは、雨降りの夕方に、大きな河の河口に立って、たくさんの水が海に流れこんでいくのをいつまでも眺めているときのような気持ちだ。」

 本書で、散りばめられた素晴らしい小説の文章と、福田氏のピリっとした評論を読んで、『村上春樹』の32年間の小説人生を覗いてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、不思議な『村上ワールド』に入りこみ、人生観がガラリと変わるかもしれません。

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