連載
続・鴇田崇の映画でいっぱいいっぱい!

『ファースト・マン』ライアン・ゴズリング Interview!

映画『ファースト・マン』は大ヒット公開中!

全世界的な話題作となった映画『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼル監督と主演のライアン・ゴズリングが再タッグを組み、人類史上初めて月面着陸に成功した宇宙飛行士ニール・アームストロングの偉業を描く『ファースト・マン』が日本でも公開に! これを記念して主人公を演じたゴズリングに来日インタビュー。偉人アームストロングとの共通点はないけれど、演じる上で一番気をつけたことなどを聞いた。


●今回、デイミアン・チャゼル監督と再び、ですが、いかがでしたか?

実は今回、自分が経験したことがないような特殊なパターンでね。『ファースト・マン』の企画自体が『ラ・ラ・ランド』以前に決まっていたので、『ラ・ラ・ランド』より前にオファーがあった。この映画を作ることは『ラ・ラ・ランド』を撮る前に決まっていたことで、その撮影中も時間の合間を縫い、リサーチなどをしていた。お互いアイデアを飛ばし合っていたので、両方の作品を同時に撮っていたような感覚だった。ひとつ買ったらもうひとつおまけが付いてくるみたいなね(笑)。

●一度コラボしていたので、撮影現場での利点が多そうですね。

やりやすかったよ。『ラ・ラ・ランド』を先に作っていて本当によかったと思うことが多々あって、あの映画を通しての信頼関係や絆が構築されていて、製作スタッフもかなりかぶってはいた。そういう意味では多くを語らずとも意思の疎通が可能で、あうんの呼吸も生まれていたからね。とてもスムーズな転換で、『ラ・ラ・ランド』のまま、『ファースト・マン』の撮影に入っていった感じはあったので、よかったと思う。

逆に言うと『ラ・ラ・ランド』をやっていないと、この映画は撮れなかったと思っていて、『ラ・ラ・ランド』よりも複雑で自分が演じたキャラクター自体も複雑だったから、『ラ・ラ・ランド』がジェミニ計画だとしたら、『ファースト・マン』はアポロ計画、だろうね(笑)。

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映画『ファースト・マン』より


●ニール・アームストロングさんという人は、多面的な異才だったそうですね。劇中の曲「ルーナー・ラプソディー」や大学時代のミュージカル活動など、音楽にも精通している方だったそうで。

ニール・アームストロングという人は実に興味深い人物で、たくさんの顔を持っていたようだよ。テルミン演奏曲の「ルーナー・ラプソディー」をはじめ、大学時代にミュージカルの台本を書いていたほどミュージカルのファンだ。そこは以外かもしれないけれど、本などで面白いエピソードを数多く知ったよ。彼は生まれついてのエンジニアだったから、小さい頃に紙飛行機が長距離を飛んでくれないことが気にいらず、自分の家の地下室にトンネルのようなものを作ったそうだ。風が吹き抜ける場所で飛行機を何度も自分で設計して、作っては飛ばしていたという不思議なエピソードがあって、そのほかにも数え切れないほど。

●天才肌だったそうで。

同じアポロ11号に乗っていたマイクコ・リンズと地球に帰還した後に、世界中にNASAの偉業を宣伝するツアーに出掛けてね。イタリアに行った際に博物館に行ったそうだが、ツアーガイドが遅刻して現れなかった。その時、ニールは美術にも精通していたので、ミケランジェロや銅像から何から何まで解説を行い、皆を引き連れて案内したというエピソードがある。そういう逸話を全部入れたら話の本題からズレてしまうので、この映画に限ると当時のミッションにフォーカスしているわけだけれど、非常に興味深いエピソードだよね。彼は本当にすごい人だよ。

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●共通点はありますか?

残念ながら僕は彼のような資質は持ち合わせていないので、彼とは似ていないと思うけれど、例のテルミンが好きとかそれくらいかな(笑)。

●共通点はないけれど、ニールさんの影響で月に行きたがる人が出てきたり、『ラ・ラ・ランド』を観て渡米しちゃう人とか、すごく影響力を与えてしまう仕事をしているという意味では同じではないでしょうか。

ありがとう(笑)。

今回は、演じる上ではなく気持ちの上で、ニールさんとジャネットさんのふたりの息子さんがご存命で、この映画にも関わっているので、彼らが僕が演じているニール・アームストロングを観るということが、ずっと念頭に重くのしかかっていたよ。彼らの期待を裏切ってはいけないわけで、実の父親と母親も描かれるので、大切な思い出を壊してもいけないよね。そういう意味では忠実に、敬意を持って父親像を演じなければいけなかった。『ファースト・マン』では、そこが一番難しかったよ。

(取材・文/鴇田崇 写真/奥野和彦)

<STORY>
21世紀の今でも困難な宇宙の旅。携帯電話さえなかった時代に、月を目指した者たちがいた。前人未踏の月面着陸というミッションに始まり、志半ばで散った仲間の命、愛する家族の切なる祈りと希望、さらに偉業達成の陰にあった秘話までニール・アームストロングを軸に描く巨編。

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***
『ファースト・マン』
大ヒット公開中!

監督・製作:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、カイル・チャンドラー ほか
配給:東宝東和

原題:FIRST MAN
2018/アメリカ/141分
公式サイト:http://www.firstman.jp/
©Universal Pictures

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鴇田崇(ときた・たかし)

1974年生。国内最大級のアクセスを誇る総合映画情報サイト「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在はフリー。年間延べ250人ほどの来日ゲスト、俳優、監督への取材を行い、雑談のような語り口で相手のホンネを引き出すスタイルは、一部の関係者に定評がある。史上もっともアガッたインタビューは、あのM・ナイト・シャマラン監督に「キミの体からは気が出ている!」とホメられたこと。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。

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