『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』ジェフ・ロウ監督インタビュー!
『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』ジェフ・ロウ監督
2023年というのはアメリカにおけるアニメ映画ビジネスにおいて転換期になる年かもしれません。というのも『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が世界的にも日本でも大ヒットとなりました。今までこういうキャラクター(IP)系に対しハリウッドはまず実写映画化を積極的に推し進めてきましたが、アニメ映画も「あり」という流れが生まれつつあるようです。こうした中、マリオ、スパイダーマンに続く期待作『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』がいよいよ日本でも公開されます。全米では興行面でも批評面でも大成功をおさめ、すでに続編も決まっています。そしてこの作品、テイストは『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』に近くティーンから大人までハマる、クールなアクション・コメディに仕上がっています。公開に先立ち本作の監督ジェフ・ロウ監督が来日、インタビューする機会にめぐまれました。ジェフ・ロウ監督はSFコメディ・アニメ『ミッチェル家とマシンの反乱』(日本ではNetflixで配信)で高い評価を得て本作に抜擢。期待のアニメ監督です。
ちなみにミュータント・タートルズはもともと自主出版のコミックから始まり、それが業界関係者の目にとまり90年代に子ども向けTVアニメとなって大ヒット。一方実写映画化もなんども作られました。TVアニメは子ども向け、映画は子どもからティーン、大人まで楽しめる(いわゆるマーベルやDC映画と同じ層)となんとなくすみわけが出来ていたのですが......。
すぴ:『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』(以下『ミュータント・パニック!』)はタートルズ・ファンとしては大満足でした。ただタートルズの映画というとやはり実写のイメージが強い。(註:本作の前にタートルズの映画が6本作られていますがそのうち5作は実写映画)。監督として実写に負けないものを作ろう、という意気込みがあったのでは?
ジェフ:まず僕は実写版のタートルズ映画もTVアニメも大好きです。タートルズのおもちゃも好きです(笑)。実写に負けない、というよりは実写映画と同じように受け入れてもらえるアニメ映画を目指しました。アメリカでは「アニメ映画=子ども向け」でしたがこの風潮が変わり始めています。実写映画を楽しむ十代や大人も十分ささる作品に仕上げました。グラフィックはアーティスティックだし、アニメにしては実写を意識した長まわしのシーンが多い。1つの場面の中で4人が登場しそれぞれが勝手なことをしている。こういうディテールやナチュラルさにこだわったので実写映画好きにも違和感なく受け入れられると信じています。
すぴ:昨今様々なヒーロー映画が作られていますが、その中でミュータント・タートルズがこれほどまで長きにわたって愛される理由はなんだと思いますか?
ジェフ:ユーモラスでファニーということです。シリアスすぎないヒーロー。例えばどのヒーローと友だちだったら楽しいかと考えたらタートルズじゃないですか?バットマンはかっこいいけど友だちだったら緊張しちゃいますよね(笑)
すぴ:監督として今回のタートルズで実現したかったのは?
ジェフ:まず隠し味としてモンスター映画のテイストを入れました。やはり「ミュータント」なので。クライマックスを見れば僕が日本の怪獣映画が好きってわかるでしょう?
様々なミュータントが暴れまわるのでクレージーな面白さが出たと思います。ちょっと不気味だけど愛らしいですよね。まさにミュータント・パニックです。
すぴ:加えて今回はジャッキー・チェンが参加したりとカンフー映画の要素もありますよね。
ジェフ:そうです!やはりタールズというのはマーシャルアーツ・コメディ(格闘系コメディ)ですから。そこにあのジャッキー・チェンが参加!自分たちが作ったキャラクターに、あのジャッキー・チェンが声を吹き込んでくれました。感激でした。だからタートルズのアクションもジャッキー・チェンのカンフー映画を徹底的に研究し絵コンテをきりました。殴っておしまいでなく殴られた相手がどういうリアクションをするかとか。
すぴ:モンスター×カンフー、この2点が監督としてこだわったポイントですか?
ジェフ:一番こだわったのは十代=ティーンエイジということです。(註:ミュータント・タートルズの正式名称は「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」なのです)今回セス・ローゲン(俳優にして本作のプロデューサー)といまの十代/ティーンエイジのリアルをとりれようと。
十代というのは無鉄砲でバカなこともやればとても純粋な気持ちでみんなを助けようとする。そして大人とは違う、自分たちの文化や価値観を持っている。
セスと僕で脚本を書いたんですが、タートルズのセリフまわりはこのキャラを演じる4人のアドリブとかアイデアに任せました。彼らはいまの十代だからです。僕らおじさんが書いた言葉じゃダメなんです(笑)。本作のヒロイン、エイプリルの描き方も今までと違います。これまでのエイプリルはしっかりした女性でしたが、本作の彼女はカメラの前に立つと緊張して吐いてしまうというキャラです。こういう不完全さや欠点を持ったヒロインだから同じように未熟のタートルズと心を通わせることが出来るわけです。観ている観客の皆さんも共感をいだきやすくなるでしょう。
とても楽しいインタビューでした。
ジェフ・ロウ監督は自分をおじさんと言っていますが、とても若くてナイスガイです。
監督の言葉どおり『ミュータント・パニック!』は、このキャラを構成する4つの要素、ティーンエイジのカルチャー、ミュータントのSF、ニンジャのアクション、タートルズの愛らしさが見事にミックスされたノリのいいエンタテインメントです。繰り返します、マリオ、スパイダーマンの次はタートルズですよ!
(文/杉山すぴ豊)
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『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』
9月22日(金)公開
監督:ジェフ・ロウ
配給:東和ピクチャーズ
原題:Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem
公式サイト:https://www.turtles-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/wIBDHDeQc1E
© 2023 PARAMOUNT PICTURES.TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES IS A TRADEMARK OF VIACOM INTERNATIONAL INC.