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杉山すぴ豊の、アメキャラ映画パラダイス

もうすぐ最終回! 夫で父のスーパーマンを描く心温まる家族の物語。『スーパーマン&ロイス』

『スーパーマン&ロイス』 NHK総合にて、7月17日(日)23時より最終回を放送予定
『スーパーマン&ロイス』 NHK総合にて、7月17日(日)23時より最終回を放送予定

NHK総合で日曜の23時から放送の海外ドラマ『スーパーマン&ロイス』がもうすぐ最終回を迎えます。(最終回の放送は7月17日<日>23時〜予定)。

タイトルからわかる通り、アメコミ・ヒーローの代表格スーパーマンをテーマにしたドラマ・シリーズ。そう聞くと正義の味方スーパーマンが毎週毎回、悪党(ヴィラン)やエイリアン等と戦うヒーロー物を想像するかもしれませんが、一味違うドラマになっているんですね。タイトルの後半『&ロイス』に注目してください。ロイスとはロイス・レインという女性の名前。原作コミックでもスーパーマンの恋の相手として描かれてきました。このドラマでスーパーマンはロイスと結婚しているという設定。さらに年頃の2人の(双子の)男の子もいる。つまりあのスーパーマンが夫であり父だったら?という、一風変わったファミリードラマなのです。もっとも90年代に放送された『新スーパーマン』というドラマ・シリーズもロイスとスーパーマンの関係に焦点をあて、ついに結婚するという展開でした。けれどこちらはロマンス・コメディ。それに対し『スーパーマン&ロイス』は家族の物語です。

ここでスーパーマンというキャラについて軽くおさらいすると、このヒーローは1938年にコミックでデビュー。アメリカの田舎町スモールビルに、小さな男の子の赤ちゃんを乗せた宇宙船が不時着します。この宇宙船は崩壊する惑星クリプトンからやってきたものであり、赤ん坊の両親はせめて息子だけでも助けたいと地球に逃がしたわけです。心優しいケント夫妻に助けられた男の子はクラークと名付けられすくすくと成長。しかしクリプトン星と地球の環境の変化が作用し、クラークは無敵の力を持つ超人になります。その力を正しいことに使いたいと考えた彼は大都会メトロポリスに出てヒーローとして活躍するようになる。それがスーパーマンです。昼はクラーク・ケントと名乗り新聞社デイリー・プラネットの記者として働いていますが、ひとたび事件が起こればスーパーマンに変身して(正確に言うと着替えて)大活躍するのです。

スーパーマンは世界初のスーパーヒーローと言われています。それまでもターザンとか快傑ゾロとかヒーローはいたのですが、不死身の体で怪力、空を飛べるというスーパーパワーを持った英雄というのは彼が初めてでした。しかしスーパーマンは完全無欠、無敵すぎます。そこでこのキャラに人間味を持たせるため2つの設定を加味しました。まずスーパーマンは誰もが憧れるスーパーヒーローですが、日頃の彼はクラーク・ケントというちょっと気弱でどんくさい男になりきりその正体を隠している。そして同僚記者のロイス・レインを愛しているが、ロイスはなんとスーパーマンを愛しておりクラークのことを男としてあまり認めていない。

けれど時代と共にこれらの設定は変わっていきます。初期の段階では、スーパーマンこそが彼の本当の人格でクラークは世間を欺く仮の姿でした。けれどクラークこそが彼の真の姿・人格であり、スーパーマンとは彼がヒーロー行動をする時の芸名みたいなもの、という解釈が主流になっていきます。

また社会がスーパーマンを見る目も少しづつ変わってきます。最初は手放しで彼を称えていました。けれど最近の映画やコミックでは、ここまで一人の人間が強大な力を持つのは危険ではないか?スーパーマンがもし悪人になったら世界は終わってしまうのではないか?という問題提起もなされるようになりました。

今回の『スーパーマン&ロイス』はまさにそうした視点がもりこまれています。
まずこのドラマの大きなポイントはロイスはスーパーマンではなくクラークを愛しているということです。結婚を決めた時に、初めてクラークがスーパーマンだったと知らされるわけです。彼が、スーパーヒーローという超セレブだから結婚したわけでないのです。だからロイスはスーパーマンの活動は容認しつつも、クラークとの家族生活を第一に考えています。そして2人の男の子を授かる。彼らは思春期まっただなかです。当然、色々な悩みを抱えています。こうした中、クラークは恐ろしいパワーを持ったヴィランから地球を守りながらも、妻ロイスから「今日は地球の平和ではなく家族のことを考えて」みたいに言われる。さらに子どもたちから「パパはヒーローとしては最高かもしれないけど父親として最低!」みたいにブチ切れられる。さらにさらに故郷であるスモールビルがすたれていくという経済格差の問題、つとめていた新聞社がITメディアに買収されリストラされる(!)という不運にもみまわれます。そしてスーパーマンみたいな存在は人類にとって危険だ、と思う敵も現れるのです。無敵のスーパーマンに、ありとあらゆる家族の悩み、社会問題が襲い掛かるのです。このファミリーがそれをどう乗り越えていくのか、というお話です。こう書くと全然ヒーロー物っぽくないですが、そこはご安心ください。映画並みのスーパーアクションの見せ場もちゃんとあります!

クラークとロイスの夫婦の物語であり、双子の男の子たちの青春物であり、社会問題を描いた寓話であり、スーパーマンVSスーパーヴィランのアクション活劇であり、そしてなによりもこの家族を応援したくなる心温まるファミリードラマです。

(文/杉山すぴ豊)


『スーパーマン&ロイス』
NHK総合にて、7月17日(日)23時より最終回を放送予定
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/supermanandlois/

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杉山すぴ豊

アメキャラ系ライターの肩書きで、アメコミ・ヒーロー映画やSF、モンスター映画についての伝道活動を、雑誌、TV、WEB等で展開。 映画「アメイジング・スパイダーマン」「アベンジャーズ」の劇場パンフレットにも寄稿しています。映画「サラリーマンNEO劇場版(笑)」にCMクリエーター役でなぜか出演。 AOL等でもコラム展開中。
また人気と評判の(笑)ブログはこちら http://supi.wablog.com/

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