もやもやレビュー

【無観客! 誰も観ない映画祭】第23回『会社の怪談 オフィス・ホラー・ストーリー』

『会社の怪談 オフィス・ホラー・ストーリー』(VHS廃盤 / 筆者私物)

『会社の怪談 オフィス・ホラー・ストーリー』
1997年・73分
監督/加藤文彦
脚本/島田元
出演/白鳥靖代、入江雅人、藤倉みのり、木村波彦ほか

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 今年の夏は殺人的猛暑! ということで今回は納涼怪談祭りを。1995年、小学生を震え上がらせたトイレの花子さんや口裂け女を映画化した『学校の怪談』は大ヒットを記録し、4作までシリーズ化されました。そんな状況下『学校の怪談3』(97年)の公開時、オリジナルビデオや美少女アニメを制作するKSSが『会社の怪談 オフィス・ホラー・ストーリー』のビデオを発売しました。全国500社に送られたアンケートの中から選ばれた怪談集『カイシャの怪談』(95年発行・ワニブックス)を原作に映像化した作品です。

 監督は「団鬼六シリーズ」や『ロリコンハウス おしめりジュンコ』(83年)などを手掛けた加藤文彦ですが、当時グラビアでも活躍していた主演の白鳥靖代は脱いでいません(残念!)。またVHSビデオジャケットがなかなかの傑作でして、本家『学校の怪談』のポスターには「こんどの夏休みに、出ます。ウワサがホントになりました。」というキャッチコピーと共に「うひひひひひひひ」と文字がデザインされていました。これに対して『会社の怪談』では「"学校"に出るモノは"会社"にも出ます。」。そして「うひひひひひひひ」も。グッジョブですが、DVDでパッケージデザインが凡庸なものに変更されてしまったのは残念です。

 内容は第1話「十三階の恐怖」(原作題不明)と第2話「異界通信」(原作題『死を予告するパソコン』)の2本立てです。ちなみに第2巻がおニャン子クラブ・新田恵利をゲストに迎え同時発売されていますが、筆者は未見なので今回は第1巻のみのご紹介となります。


●第1話「十三階の恐怖」

 派遣社員の赤坂美紀(白鳥靖代)は、8歳の時にトンネル落盤事故に遭い父親を失い記憶喪失になり、以降霊感が強くなりました。仕事が決まった美紀は膝上15センチのミニスカで初出社しますが、1階フロアーの各部署パネルに13階のネームプレートがありません。怪しい会社ですが、気を取り直した美紀は部長に背中をさすられながら(今ならセクハラ)挨拶をすませます。すると早速、単身赴任の妻子持ちでイケオジの桜田主任に目を着けられ、歓迎会と称して仮住まいのホテルのバー・カウンターに連れ出され口説かれます。美紀も主人公にしてはユルユルで、簡単に部屋まで付いていきますが、キスをされながら頭を抱えて苦しみ出します(霊感発動)。窓から見える社屋の13階は血のように赤く染まって見え、美紀は主任を拒みまくって帰ってしまいます。

 桜田主任に捨てられたOL(死語?)が屋上から飛び降り自殺をしていたことを知った美紀は、翌日屋上で献花します。その夜、主任は美紀に残業を頼み「彼女は遊びだった。君は本気だ」と、事務デスクの上で昨夜の続きをやろうとクズの本領を発揮します。美紀は抵抗してビル内を逃げ回ると、突然13階フロアに通じるドアが開き「こっちよ」と同じ制服を着た見知らぬ女が美紀を手引きします。廊下には眼窩から両目が垂れ下っているスーツ着用のゾンビが歩いていて、2人は倉庫に逃げ込みます。そこを主任に見つかりますが、彼は女の顔を見るなり驚愕して「すまん!」と土下座します。すると倉庫に入って来たゾンビは主任を襲い目に指を突っ込みます。その間に2人は倉庫を脱出しますが、ゾンビは両目のない主任を引き摺りながら迫ってきます。女は「あたしはここで怨霊を引き止めるわ」と、エレベーターに美紀を1人で乗せます。美紀が「あなた......」と何かに気付くと、女はニコッとしてエレベーターが閉じます。社屋ビルの外へ出て13階を見上げる美紀に「花をありがとう」と女の声が響くのでした。

 助けてくれた女は自殺したOLの幽霊で、ゾンビは主任のイジメが原因で死んだ同僚の怨霊でした。彼はノイローゼになって会社に来なくなり、飲まず食わずで引き籠り、自分の目をえぐり出した挙句、部屋の中でミイラになって発見されたのです。


●第2話「異界通信」

 次の派遣先で美樹が座った席は、行方不明になった社員・英一の席でした。ある日、美紀はアパートの鍵をデスクに忘れてオフィスに戻ります。すると真っ暗な部屋の中、美紀の席で電源が入ったパソコンのモニターに上半身裸で乳房を擦り付け、脚を絡めて悶えている女がいました。英一の同僚で恋人の純子です。美紀に気付いた純子は悪びれるわけでもなく、「あなたには私達のことを知る義務があるわ」と告げ、パソコンに向かって「話して! 英一君」。するとパソコンがプリントアウトを始め、そこには事の顛末が記されていました。

 英一が嵐の夜に残業していると落雷で停電し、復旧すると画面にURLが出てきます。好奇心で開いてみると胎児のイラストが描かれたサイトに繋がりました。そのサイトはチャットでギャンブルの当たり番号を教えてくれるため、英一は残業しては大儲けします。やがてサイトは部長の急死や、幼馴染みが乗っている飛行機の墜落を予言的中させます。謎のパソコン通信に取り憑かれた英一を案じる純子は、「もうサイトを開かないで」と懇願します。そんな純子のために英一も誘惑と戦いますが、突然「港区丸木戸3-4-13」という住所が表示されます。英一がそこへ行ってみると病院の廃墟で、中庭には英一の分身がいて「僕はパソコンの中のあんたさ」と説明を始めます。何度セリフを聞き直しても理解できませんが(苦笑)、「病院のパソコンが霊界サイトの入口で、落雷により英一の魂がプログラミングされた」とか言っているようです。すると英一は微笑みを浮かべながら木から下がる首吊り用ロープに首を通し「新しい世界へ」と自殺、分身と同一化して霊界サイトの住人となるのでした。翌日、美紀は英一の手記を課長に見せパソコンを処分するように進言しますが、変な子扱いされ採用を取り消されてしまいます(泣)。一方純子は、廃病院の中で一人踊り狂うのでした。


 美術スタッフに井口昭彦という名を見つけましたが、この方は何気に大物。その昔『帰ってきたウルトラマン』(71年)や『ウルトラマンA』(72年)などで防衛隊のメカや怪獣を、ビッグネームとしてはウルトラの母メカゴジラも彼のデザインによるものでした。このビデオが発売された翌1998年に『リング』が公開され、ジャパニーズホラーブームが本格的に幕を開けるのです。

【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

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