もやもやレビュー

【無観客! 誰も観ない映画祭】第4回『タイガーシャーク』

『タイガーシャーク』
1977年・メキシコ、イギリス・87分(1978年日本公開)
監督・脚本/ルネ・カルドナ・Jr
出演/スーザン・ジョージ、ヒューゴ・スティグリッツ、フィオナ・ルイス、アンドレス・ガルシアほか
原題『TINTORERA!』
***

 あけましておめでとうございます。2022年は寅年という事で、虎の動物パニック映画でスタートしようと思いましたが、輸送中のトラックから脱走したベンガルトラがアメリカの田舎町で人を食う『ワイルドサヴェージ』(06年)ぐらいでしょうか。う~む、ちょっと弱いですか。ならば、虎は虎でも『タイガーシャーク』で強引に新年の幕を開けましょう。

 原題は『TINTORERA!』で、海洋学者ラモン・ブラボーの同名小説が原作です。カリブ海に浮かぶイスラ・ムヘレス島沿海に出現する「ティントレラ(雌鮫の意味)」と呼ばれる5.8メートル(通常は約4メートル)の大物イタチザメの話です。実はタイガーシャークの和名はイタチザメで、ややこしい事にトラザメという50センチほどの大人しい別種がいるのです。監督はメキシコが誇るC級映画の匠ルネ・カルドナ・Jr。その内容はラテンアメリカ気質に溢れ、子供連れで行ったら最後、親子間で最悪の気まずさを味わう結果が待ち受けていました。


 アメリカで大成功を収めた実業家スティーブ(ヒューゴ・スティグリッツ)は、大型プレジャーボートを購入し「タイガーシャーク号」と命名します。メキシコのリゾート島に係留し、ナンパした女の子とヤリまくろうというのです(男の夢)。ビーチにいるビキニ娘を甲板から双眼鏡で物色するスティーブは、巨乳のパトリシア(フィオナ・ルイス)をロックオン、手慣れたアプローチで船上のディナーに招待します。いとも簡単に極上ボディーを味わったスティーブは、翌日も金に物を言わせて水中スクーターやティンギー(小型ヨット)でパトリシアを楽しませますが、体目当てと見透かされ逃げられてしまいます。

 翌日、スティーブはパトリシアと歓談している地元の青年ミゲル(アンドレス・ガルシア)にヤキモチを焼いて殴り倒し、完全にフラれてしまいます。パトリシアは海沿いに建つミゲルの家にお泊りし、未明に1人で全裸のまま遊泳します。そこへ現れたティントレラがガブッといった瞬間、パトリシアの両脚が海面からピンッと飛び出す死のアーティスティックスイミング(『犬神家の一族』とも言う)。鮮血に染まった海中を、パトリシアの頭をくわえたティントレラが悠々と泳ぎ去っていきます。

 目覚めたら消えていたパトリシアに「一夜限りか」と気に留めないミゲルは、すぐさまビーチで女子大生2名をナンパ。パトリシアを探しに来たスティーブを「友達だ」と2人に紹介するミゲルは、「尻の丸みが最高~」と女子大生の尻をポンポン叩きながら「彼女はどこかへ行っちゃったね。でもベッドの中で君の名を呼んだよ」と慰める心の広いナイスガイです。そんなミゲルのペースにすっかりハマったスティーブはパトリシアの事などすっかり忘れ、タイガーシャーク号に3人を招待してスワッピングを楽しみます。ミゲルは優秀な鮫ハンターでもあり、翌日スティーブに鮫狩りを伝授します。水中銃で突き、ボートに引き揚げる時に棍棒で頭を叩いてトドメを刺すのです(劇中で実演)。

 次の夜に2人は、狩場と化したレストランで別の女を物色します。ナンパされたガブリエラを演じるのは、サム・ペキンパー監督の『わらの犬』(71年)で田舎の青年達に輪姦される若妻を演じ、チャールズ皇太子の元カノだったスーザン・ジョージ。さっそく3人はタイガーシャーク号で3P。ミゲルはスティーブに「俺はガブリエラから手を引いてもいいぜ。将来なんてクソ食らえだ。俺が死んだら女を集めて笑って踊って陽気にパーティー開いてくれ」。そんな刹那的なミゲルを「人生の達人」とスティーブはリスペクトします。ガブリエラとセックスする時は「どうぞ」「いや君から」なんて両君は譲り合い、ダラダラと自堕落な淫蕩生活が続いて一か月が経過。もう物語は終盤になってしまいました。ティントレラは元気ですかねえ......。

 仲良しコンビは、さらに鮫を殺しまくります。この作品のため一体何匹の罪もない鮫が殺されたのか知りませんが、実はカルドナ・Jr監督は他にも『1000匹の猫の夜』(72年。主演ヒューゴ・スティグリッツ)や『バード・パニック』(87年)などで生きた猫や鳥を虐待して悪評を受けていました。

 そんな幸せの絶頂をぶち壊したのは、お久しぶりのティントレラでした。まるで出番を待ち侘びたストレスを発散させるかのように大暴れします。ミゲルに噛み付いたティントレラがクチャクチャと咀嚼すると、手は千切れ、腸ははみ出て、分離した下半身が断面から臓物をヒラヒラさせながら海底に沈んでいきます。泳ぎ去るティントレラの口には、水中メガネを掛けたままのミゲルの頭。これまでのダラダラを一気に解消する大惨殺シーンでした。

 これを目の当たりにしたガブリエラはショックで去り、親友を失ったスティーブは「鮫が憎い!」と片っ端から鮫を殺しまくります(船名も変えれば?)。夜は「俺が死んだら乱痴気パーティー開いてくれ」と言っていたミゲルのため、いつものレストランでナンパして追悼乱交をします。だが酔って夜の海に入り、裸で抱き合う男女の中にティントレラが突入! 浅瀬は阿鼻叫喚となり文字通り血の海になりますが、「やっちまえ~」とティントレラを応援している自分がいました(笑)。

 翌日、スティーブは無謀にもティントレラに一騎討ちを挑みます。誘うために大きなマダラトビエイを無慈悲に殺すと(魚、殺しすぎ!)、血の匂いを嗅ぎつけてやってきましたティントレラ。スティーブの脳裏に「チャンスは1回だけ。目と目の間を狙え」というミゲルの教えがリフレインします......。


 クエンティン・タランティーノはこの作品の大ファンで、『イングロリアス・バスターズ』(09年)ではヒューゴ・スティーグリッツという役名のキャラ(演者ティル・シュヴァイガー)を登場させているほどです。日本公開版は87分でしたがノーカット版は126分あり、国によってはカットされるヌードや性行為シーンが長尺で収録されています。観たい方は、その全長版を必死にお探しください。


(文/シーサーペン太)

シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム