"別人"になった愛する人『ノイズ』

　ジョニー・デップとシャーリーズ・セロン共演のSFサスペンス映画『ノイズ』（1999年）。本作では、ジョニー・デップが宇宙空間での事故から奇跡的に生還した宇宙飛行士役を好演。生還後、別人のようになってしまった夫に対する妻の不信感をサスペンスに満ちた物語とともに描いています。

　NASAの宇宙飛行士として働くスペンサー。有能な彼は、同僚の宇宙飛行士とともに宇宙空間で事故に遭ってしまいます。「あれはなんだ？」という言葉で交信がストップ。2分間交信が途切れたものの、2人とも地球に帰還しました。NASAから爆発事故が発生したと連絡を受けた妻のジリアンは、急いでスペンサーの治療室へと向かいますが、彼は命に別状はなく、奇跡的に健康体でした。しかし、スペンサーは、交信が途切れた2分間について話したがらず、さらには宇宙飛行士を辞めてニューヨークで働くと言い出したことから、違和感を持ち出すジリアン。彼の言動も何だか以前と違うことから、不信感を抱くように。

　スペンサーとのあいだに赤ちゃんを授かったジリアン。不安や喜びの感情の中に、「スペンサーからいつも見られている」という不思議な感覚もありました。次第にその感覚は強くなり、スペンサーに恐怖を抱くようになっていきます。しかし、ジリアンは過去に精神的な病を持っていたことから、スペンサーが恐ろしくなったのか、自分が精神的に不安になっているのかが、わからなくなり、その戸惑いが恐怖となって観客に伝わってくるのです。果たして宇宙での事故で何があったのか。驚きの結末もぜひ楽しんでください。

（文／トキエス）