科学の大切さを教えてくれる『鮫の惑星:海戦記パシフィック・ウォー』
- 『鮫の惑星:海戦記(パシフィック・ウォー)(字幕版)』
- アシュレイ・デ・ラング,ジャック・アームストロング,ジョン・サヴェージ,ジョナサン・ピーナー,タンディ・セベ,マーク・アトキンス,マーク・アトキンス
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サメ映画に限らずB級映画の設定は大体雑だ。怪物を倒すために核弾頭を自国に打ち込むというのは、限りなくゼロに近いけど不可能な話ではない。初めてそんなオチをつけた映画を視聴した時は制作陣の正気を疑ったが、それより酷い作品がこの世に山のように存在するとは思わなかった。
本作はそういったデタラメ設定の中でも特に酷く、矛盾がそこかしこに散りばめられているせいで興ざめすること甚だしい。
Amazonのprime videoに書かれているあらすじを引用すると以下の通り。
「時は近未来。温暖化による氷河の融解の影響で、地表の98%が海に覆われていた。僅かな生存者たちは、海上に建てられた基地や船の上でなんとか生きながらえていた。もはや、地球の支配者は人類ではなかった。今、生態系の頂点に立っているのは獰猛な鮫であった。そして、さらなる水温の上昇で海中は食糧不足に陥り、空腹となった鮫は人間を狙い始めていた。さらに鮫たちは群れをなし統制のとれた行動をとるようになる。それは、大群を統率する鮫が存在しているとしか思えなかった」
上記のように書いてあったらサメが支配者となった世界を想像するだろう。しかし、本作では貧相なCGのサメが10匹ほど出てくるだけ。サメの群れはメスのサメが体から発する電気で統制しているという。何を言っているのかさっぱり分からない。
登場人物たちは二酸化炭素を分解する衛星を発射するためにロケットを飛ばそうとしているのだが、電力はメスのサメ。頭に素手で電極を突き刺し無事に発射が成功するという、色々なものを無視したデタラメぶりだ。馬鹿馬鹿しい映画を観ていることは承知の上だったが、リアリティの欠片もない世界観に乾いた笑いしか出てこない。科学について理解していない人間でも、本作の荒唐無稽さは耐え難いものがある。制作陣が何を考えて本作を世に出したのか知らないが、ここまで科学を無視した作品も珍しい。分からないなら無理にSF風の作品にしなければよかったのに。
もっとも、こうしたものが商業映画として流通している時点で、作中の世界がいかにデタラメで無茶苦茶なものであっても驚くことはないのかも知れない。某サイトで本作の評価を調べたら2.8以上もあった。高評価をしている人たちのレビューには、苦痛を楽しむ旨のコメントがあったが、多分本作を観るより滝にでも打たれた方がマシだ。
(文/畑中雄也)